雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

2018-01-01から1年間の記事一覧

【感想】日曜日たち(吉田修一)

絡み合うということはどこかですれ違っているという意味でもある。 たとえ一緒にいたとしても、人と人とは違うもので、気づかないふりをしているけれど、少しずつ距離が生まれたり、不意に縮まったりする。 仲の良かったはずの友人が疎遠になったり、疎遠だ…

【感想】WILL(本多孝好)

両親を亡くし、高校卒業とともに葬儀屋を継いだ森野のもとへ舞い込んでくる幽霊話。自分の葬儀に変な噂が立たないように、森野は事情を調べ始める。 前作に『MOMENT』という小説があり、こちらについては随分と前に読んだ。記憶は曖昧なのだが、そのときの主…

【感想】ノエル―a story of stories―(道尾秀介)

人間は誰もが悪意を持ちうる。 道尾秀介さんの作品を読むと、いつもこの感覚がまとわりつく。 物語だとわかっているのに、不穏さに胸が締め付けられる。環境や精神の変遷をうけて、人間らしさをつかさどっているはずの理性がくるりと真っ黒に染め上げられる…

【感想】くちびるに歌を(中田永一)

長崎県の五島列島、とある中学校の合唱部。顧問の先生が産休に入り、新しい先生が東京から訪れる。 NHKコンクールまでの日々を、三年生の子どもたちを主体として送る物語。 中田永一名義の小説は『百瀬、こっちを向いて』以来となります。 もちろん本名義の…

【感想】月と蟹(道尾秀介)

道尾秀介で思い出すのは、『向日葵の咲かない夏』だ。大学時代に読み、泥の中に沈み込んでいくような不穏さが癖になり、真実が明らかになったときは息苦しさを覚えた。後に弟に貸し与えて、あまり好意見が返ってこなかったことにモヤモヤもしたのだが、今と…

【感想】一人っ子同盟(重松清)

自分が初めて重松清作品に触れたのがいつだったか、実のところ曖昧だ。 大学一年生の暇な時期だったか、高校卒業間際の空白期間か、あるいはそれよりもずっと前のことか。 とはいえ最初に購入した作品は覚えている。地元の古本屋の、漫画コーナーにおいやら…

【感想】路(吉田修一)

一九九七年、台湾の台北―高雄間高速鉄道建設工事の入札にて、自らの技術力を過信していた日本は、より低い予算を呈示した欧州連合を相手に敗北を喫した。しかしその後、台湾からのまるで恩赦のような申し出により、敗者復活の可能性を得る。三年後の二〇〇〇…

他者と自己についての日記

ゴールデンウィークなので実家にいる。明朝には職場近くの住居へと帰る予定だ。 実家は小学校と目と鼻の先にある。本気を出せば通うのに1分も掛からない好立地だが、小学生の自分は嫌がっていた。他の子たちのような、小石を蹴ったり寄り道をしたりして小一…

【感想】笹の舟で海をわたる(角田光代)

新居を探す二人の女性。年齢はどちらも六十代。若干入り組んだ関係性を仄めかせながら、不動産会社の勧めた物件についてありかなしかを話している。 家族小説なんだろうと、冒頭部を眺め、気が向いたら買おうと思ったのが今年の初めの頃だった。創作のために…

【感想】『先生とそのお布団』(石川博品)

以前、ライトノベル作家のアンソロジーの中で石川博品さんの作品をお見かけしたことがあり、ここでも記事を書いたことがある。 その流れで数年ぶりに書店のラノベコーナーに足を運び、この作品を見つけるに至った。以前読んだ作品と同じように、こちらもカク…

時をかける俺以外(カクヨム版)公開しました。

自作の同人小説『時をかける俺以外』について、下記のとおりカクヨムに転載いたしました。 ブーン系小説版とは設定含め諸々の要素が異なります。 また、書籍版とは概ね変更はありませんが、誤字脱字、表記の揺れ等を修正しております。 今回は前半のみの投稿…

【感想】もしもし、運命の人ですか。(穂村弘)

前の部署の傍には図書室があり、担当の方が時折新しい本を仕入れていた。 大抵は業務に関わる内容だったのだが、たまに流行の本が入荷されることもあった。 その中で、『本当はちがうんだ日記』というタイトルを見かけ、つられて手に取ってしまった。 それが…

【感想】7月のちいさなさよなら(石川博品)

昨年の末、『僕とキミの15センチ』(ファミ通文庫)という本を読んだ。これは15センチをテーマにしたアンソロジーで、参加者は基本的にライトノベルを発表している方々だった。 ライトノベルを読みたいと思いつつ、長く続くシリーズを読む気力がなかなか湧…

【感想】風に舞い上がるビニールシート(森絵都)

2017年の末に、その年に文芸雑誌に掲載された短編を寄せ集めたアンソロジーを読んだ。 テーマが特にあるわけでもなかったのに、そのうちの半数がミステリ風味なのが何だか気にくわなかったのだが、そんな中で一人、ミステリではない作品を書いていたのが森絵…

【感想】すべて真夜中の恋人たち(川上未映子)

これは大人の恋愛小説と、割り切ってしまうと、バイアスが掛かってしまうように想われる。 この物語の主人公は三〇代の後半に差し掛かる女性で、相手は五〇代と思われる初老の男性。客観的には大人同士。そういったものに興味があるかと言われると、どちらか…

【感想】映画篇(金城一紀)

大学四年の時間を持て余していた時期に、映画好きの後輩から『GO』という邦画を勧められた。 在日朝鮮人の主人公が社会と反発しつつ自分を見つめ直し突き進む映画で、触れがたいシリアスなテーマにも関わらず、視聴後の気分は爽快だった。 『GO』の原作者と…

アドヴァンシヴかつグローヴァルなネオ・ポスト・モダン・ソーシャルにおいてTRIZからファー・フロムなパスト・レガシー・コンテンツであるところの”漢文”なるものについて

最近漢詩が面白そうだと思って読み耽っていたのだが、漢文を学ぶことの無意味さを解くツイートが流れてきて、反論として漢文はこんなに大事だよ! とか、やっぱり意味ねーじゃねーかとか、いろいろな言論が飛び交っていたので、面白そうなので話題に乗って思…

【感想】音楽の海岸(村上龍)

村上龍といえば、僕はときどき作品を手に取るのだけど、いつも途中で読むのを止めてしまったり、読み終えてもうまく言葉がまとめられずに放置してしまう。 とはいえいつまでも何も書けないのもつまらないので、せっかく読み切ったことだし何かしら残してみる…

【感想】月曜日の友達(阿部共実)

舞台は中学校。主人公の水谷は、大人と子どもの境目で、周りの変化に焦りつつも目を背ける。何も考えずにいられた時を懐かしみ、今いる場所の窮屈さに嫌気が差して夜の街を走る。 学校でも姉 家でも姉。姉に似てないのがそんなに変なのか。 私は月曜日が嫌い…

自作ブーン系小説一覧

長編 さよなら、そしてまた会おう(全9話予定) 2018/11/10~ ( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ('A`)しりとりをするようですo川*゚ー゚)o(全10話) 2013/9/8~2013/12/14 ( ・∀・)探偵モララーは信じているようです (全10話) 2…

自作一般小説一覧

長編 疎遠の本懐 ……サークルクラッシャーの話。 ウィトルウィウスの夢物語 ……水車の見える街の話。 フウカのカタナ ……狐を斬る姉と対決する話。 時をかける俺以外 ……時をかける人に気づく男の話。 From AI to U ……アンドロイドの少女と絵描きの青年の話。 短…

執筆あれこれ

内省記事だよ。

ゼノギアス感想まとめ

昨年の9月から今年の2月にかけて、PSVITAで『ゼノギアス』をプレイしました。 クリア後につらつら感想をTwitterで垂れ流しましたので、ひとまずここにまとめておこうと思います。 ネタバレはありです。ご注意ください。

逼迫

時間が無い。 新年早々、ご挨拶もせずに何を言うかと思われるだろうが、時間がないのである。あけましておめでとうございます。 仕事に追われているわけではない。 趣味の活動に割く時間が足りていないのだ。 例えば読書量は、電車通勤から車通勤に切り替え…