雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【感想文】命を賭して戦うということ――『聖の青春』(映画)

なんとなくまだ胸の内がざわついていた。不調というか、不安定というか、このまま仕事の日を迎えるのも憂鬱。気を落ち着けようと東京へ向かった。 目的は往路で考えた。 電車に揺られながら映画を調べて、『この世界の片隅に』と『聖の青春』で迷って、結局…

夜だから独り言。

僕が中学生の頃、親からゲーム禁止令を言い渡された。ゲームの購入もプレイも禁止。当時持っていたニンテンドー64やゲームキューブ、プレイステーションのソフトは全て親戚に預けられ、帰ってくることはなかった。携帯ゲーム機は何故か家に置いてあった。だ…

【文フリ感想文】清楚さの裏側に見られ、見つめられる――『スロウレイン』(青樹凜音/月と缶チューハイ)

最初に読み終わった作品の方がTwitterをしていないみたいでしたので、いつものようにTwitterに垂れ流すばかりでなくブログにでも書き置きしておこうと思い立ってみました。 「月と缶チューハイ」というサークルで頒布されていた、青樹凜音さんの『スロウレイ…

【感想文】怖さと可笑しさのうらおもて――『夜行』(森見登美彦)

「どうして夜行なんだろう」 私が呟くと、画廊主は微笑んで首を傾げた。 「夜行列車の夜行か、あるいは百鬼夜行の夜行かもしれません」 十年前の鞍馬の火祭、英会話スクールの仲間の一人が失踪した。何一つ手がかりは残されておらず、虚空に吸い込まれたかの…

【感想文】正しいからこそ怖ろしい――『空白の叫び(上)』(貫井徳郎)

久しぶりの貫井徳郎は、奇抜な構成を排した重厚なクライムノベルでした。 まだ上巻しか借りていない状態で感想を書くのは、結論がわからないために不安もあるが、それでも今のところ感じたことを書き置きしておこうと思います。 時代は二〇〇〇年の少年法改…

【感想文】多数派に飲み込まれないように――『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(梨木香歩)

ノボちゃんは、僕の年頃ってのは、いろんなことを考える力を持ち始め、かつ先入観や偏見少なく(なしに、とは言わなかったな、うん)「考える」ことに取り組み始める貴重な時期で、人生に二度と巡ってきやしない。そういう時期に考えたこと、感じたことをき…