雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

エッセイ

南を指す

事情があって、若者相手に小説指南のテキストを書くことになった。 私は小説を書いているとはいえ目立った功績はなく、文芸についての学も修めていない。 不安ではあったが、書きはじめたら止まらなくて、期限の前日にはお渡しできた。 期限とは今日で、前日…

輪郭

大学時代、都内某区で周辺住民向けの運動施設に行ってみたことがあった。 数百円の使用料を支払って、ランニングマシーンで走ってみたら、あっという間に息が上がった。 脈打つ身体に意識を配り、ああ自分は確かに生きていたんだな、などと妙なことを考えた…

さえずらない日々

twitterをスマートフォンから削除して数日経った。ここで一ヶ月とか言えたらかっこつくのだけど、そんなことはない。日曜日からなので、二日だ。 何が嫌なことがあったというよりは、消してみようかなという試みで、今のところは何も不都合がない。 アカウン…

トランクス

8年間持っていたトランクスを捨てた。長い間履いていたからボロボロに、というわけでもない。どちらかといえば綺麗な見た目だ。実はサイズが合っていない。引きのばさないと僕の腰には到底届かなかった。 そのトランクスは大学時代の友人からもらったものだ…

さよなら平成

僕は平成3年12月18日の生まれであり、一週間後の25日、ソビエト連邦は最後の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフが辞任し、世界地図からその名を消した。 僕はこのエピソードが気に入っていて、生まれ年の話になるといつもつい口にしてしまうのだけど、大抵は…

【エッセイ】jazzの興り

大学四年生のときに、友達からの誘いで他学部の授業に潜り込んだことがあった。 講義のテーマはアメリカ音楽。特にジャズとロックの話だった。 僕は音楽が不得手で、知識もなかった。 それでも興味が湧いたのは、大学時代を通してロック好きの友人がいたり、…

3.11

僕が小学四年生のとき、9.11同時多発テロ事件が起きた。「これは大きな事件なんだ」という意識を持った、初めてのニュースだった。 崩れるビルを映していたカメラマンが、近隣住民に腕を引かれ、ビルの中に入る。 外は危ない、吹き飛んでくる瓦礫で怪我…

取り留め

文章を書いているときに、何を書いているんだろう、って思う。 自分の書いた文章を眺めていても、どこに自分らしさがあるのかはわからない。 それでも書いているときは書きやすいときと書きにくいときがある。これもまたどうしてなのかわからない。 書きやす…

【エッセイ】詩と学術とポッキリ

積ん読本を眺めてみれば、詩と学術本が目立つ。 終わりが見えないというか、読み通してもまた読むかもしれないと、思ってしまうからだろうなあ。 詩などは巧妙に、これを持って旅に出ようなんて帯文が付されていて、こんなこと言われたら捨てられないだろう…

【エッセイ】aとOKとら抜き言葉

" I am ~ " って " I'm ~" って省略するじゃないですか。 あれって英語圏のどこかの段階で省略する勢が多数派になったんだと思うんですけど、 そのときもa省略する奴許すまじって感じの過激派っていたんですかね? 「a抜き表現だ! 是正してやる!」みたい…

【エッセイ】綺麗と曖昧

星がキラキラ光る、というとき、キラキラという音は聞こえない。 この「キラキラ」は擬態語で、光るに掛かる副詞であり、明滅する様を言葉で表したものだ。 擬音語、擬態語は日本語では特に多く、その数は英語の3倍から5倍とも言われている。 このことから…

【エッセイ】可処分時間

読書記録にはブクログというサイトを利用している。 特に深い理由があるわけではない。強いているなら読書メーターは他人との交流を勧めてくる感じがしてつらくなり、ブクログに移行してそのままにしてある。 そのブクログで新年早々から今年の読書目標を立…

【エッセイ】会話

結構な昔、人の話を聞いていると創作に役立つと聞いて、人の会話に聞き耳を立てていた時期があった。 喫茶店や電車の中、たまたま同じ方を向いていて、声を拾い易い人とかを対象にしていた。 一番多く聞こえてきたのはお金の話で、アルバイトから投資の話ま…

【エッセイ】夕焼けと青空

自分で小説を書いているときに、よく景色が夕焼けになってしまうことがある。 学生が主人公なら、放課後がちょうど夕焼けの時間だから、無理もないのかもしれないけれど、そうでない場合にもちょくちょくあって、なんだかね。 そんなにこだわりがあるとも思…

【エッセイ】飴色と土気色

浅田次郎の小説を読んでいたときに、「飴色」という描写が連続して登場したことがあった。 飴色は知らなかったのだけど、読み飛ばすのも気が引けて、調べた。 僕の中で、艶っぽい茶色としか表現できなかった色が、あのときから飴色と呼べるようになった。 大…

【エッセイ】TRAIN-TRAIN

昔、予備校の倫理の授業をDVD受講していたとき、講師の人が突然THE BLUE HEARTSの話をし始めたことがあった。 話の流れは全く憶えていない。とにかく突然、何かに憑かれたようにして、TRAIN-TRAINがどれだけ素晴らしいかを語り出したのだ。 おそらく授業と直…

【エッセイ】街路樹

社会人になり、最初の赴任先は敷地内に緑が多かった。 「ここにいたら植物の名前を覚えるかもよ」などとの話を聞き、それは創作のネタになるなあ、などと内心喜んでいたのだが、実際の効果はどうだろう。 この幹は桜っぽいなとか、それくらいのことはさすが…

【エッセイ】雨と青空

何かの映画のオーディオコメンタリーで、雨のシーンで本物の雨に降られて迷惑だったと苦笑する場面があった。 作品の中に登場する雨は、そこには陰惨さとか悲壮感とか葛藤とか、あるいはもっと単純にそのとき雨だったことが布石・伏線になっていたりとか、と…

【エッセイ】包丁と飛び出し

たとえば包丁を使い終わって、シンクの傍に一旦放置する。 鍋をいじったりと別のことをしていると、包丁のことが気になってくる。 今足に落ちてきたら大変だよな、なんてことを考えて怖くなって、さっさと綺麗に拭いて片付ける。 そんなことを繰り返している…

【エッセイ】石柱

中国や台湾の神社は柱が石で出来ているらしい。ひとつの岩から意匠の全てを削り出すのが良いとされているらしく、同じ柱はひとつとしてないのだそうな。 西欧は石造り、日本のは木造、なんて区分けをなんとなく受験勉強中の国語の評論とかで刷り込まれてきた…

【エッセイ】新幹線

新幹線と聞いたときに僕が思い浮かべるのは、田畑を突っ切るようにして延びるコンクリート造りの高架だ。それは僕の地元の景観に由来する。 地元では新幹線の高架が東西に延びていた。 北と南に分断されていると捉えれば、市街地は北側だ。 僕が住んでいた南…