雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

2014-01-01から1年間の記事一覧

『冷たい校舎の時は止まる』(辻村深月)

0. 「この本はきっと自分に合っている」と気づいたのは、読み始めてからまだ10分も経っていないときだった。駐車場に停めた車の中で時間待ちをしていて、手元に持ってきていたこの本を読んだのである。 読めたのは最初の30ページほどまでだ。冒頭にき…

今年読んだ本をざっくりまとめる

読書管理サービスのブクログからコピペしています。 ちなみにこのサービス自体は九月から登録しています。 並び順については登録順を基準に、なるべく作者で合わせています。 【漫画】計 22冊(あくまで今年買った本だけで数えているし、登録し忘れている…

貴志祐介『硝子のハンマー』(角川文庫)

とても本格的なミステリーだ。これほど真っ向から密室殺人を解きにかかった本は久しぶりに読んだ気がする。 本格派ミステリーというのはシャーロックホームズの時代から続く、謎を解くことを主題とした物語のことだ。誰が、どうして、どうやっての三つを主に…

浅田次郎『蒼穹の昴〈下巻〉』(講談社) 備忘録

清国末期を舞台としたスペクタクルロマン。前回と同じように、付箋をはった個所を取り上げていく。 p87 「全部のことね。ずうっと、ずうっと」 王逸は頷いて、まさしく宇宙の一点に立ち上がった少女の身体を見上げた。小梅はまる一晩、「宇宙」の文字を書き…

スイートフィッシュとジグソーパズル(色彩writer)

第18回文学フリマで購入した、サークル名・色彩writer様の短編集、『スイートフィッシュとジグソーパズル』を読み終えました。 明日、11月24日に開催される第19回文学フリマでも頒布されます。 もう半年も前のことなので、手に取った理由ははっきり…

浅田次郎『蒼空の昴〈上巻〉』(講談社) 備忘録

毎朝10ページずつというローペースで読み進めていた『蒼穹の昴〈上巻〉』がようやく読み終わりました。読みながら、気になった言葉に付箋を貼っていましたので、それをここに書置きしておこうと思います。 p39 抗う気力はどこにも残ってはいなかった。春児…

スマートノートの使い方

岡田斗司夫『あなたを天才にするスマートノート』(文芸春秋)を読み終えたので、スマートノートの使い方を備忘録として書き記しておく。 あなたを天才にするスマートノート(2011/02/25)岡田 斗司夫商品詳細を見る 【第一フェーズ 5行日記】 毎日5行、やった…

岩城けい『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)

※この感想文にはネタバレが含まれます。お気を付けください。 この本を読み始めると、独特の違和感に襲われる。国にまつわる情報が少ないからだ。主人公のサリマが別の国から来た難民であることはわかるが、今いる場所がどこにいるかもわからない。主人公の…

杉山茂樹『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』(光文社新書)

この新書は、サッカーにおける布陣の重要性を、主に90年代~00年代の代表的な実例に基づいて解説している。 日本では、「サッカーは布陣でするものではない」との論調が主流だったのが、近ごろでは変わりつつある。代表のサッカーなどを通して数多くの解説、…

いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社)

こんばんは。 あるいはおはよう。 もしくはこんにちは。 想像ラジオです。 こういうある種アイマイな挨拶から始まるのも、この番組は昼夜を問わずあなたの想像力の中だけでオンエアされるからで、月が銀色に渋く輝く夜にそのままゴールデンタイムの放送を聴…

宮本輝『三千枚の金貨』(光文社)

みつけたら、あんたにあげるよ。 男はそういって、自分の病室に戻って行った。 ――三千枚の金貨 第一章 より 西アジア旅行から帰国した40代サラリーマン、斉木光生。長い旅の最中、かつて入院していた時に見知らぬ男から受けた伝言が頭の中で蘇っていた。馴染…

帰宅後の疲れをとるためにどうすればよいか

僕のメインの読書時間は通勤時間帯だ。家に帰るとどっと疲れが押し寄せてしまい、なかなか本を読む力が湧いてこなくなってしまう。 今まではこれも仕方ないかなと諦めていたのだが、やはり帰宅してからの時間をじっと動かずに過ごしてしまうのはもったいない…

『だまし絵Ⅱ・進化するだまし絵』に行きました。

9月13日にタイトルの展覧会に行きましたことをここに記しておきます。 場所は渋谷のBunkamura ザ・ミュージアム。「Ⅱ」とついていることからわかるように、前身となる展覧会が五年前に行われ、好評を博していたそうです。多くの方から「面白かった」の意…

齋藤孝『大人のための読書の全技術』第五章を要約する

読書には、自分が楽しむための読み方と、読書を通して何らかの武器を得ることを目的としたものとの二通りがある。後者が「アウトプットを意識した読書」である。 そのアウトプットする力とは何かといえば、表現する力、突き詰めるとコミュニケーション力であ…

よしもとばなな『デッドエンドの思い出』(文春文庫)

よしもとばななの名前を聞いたことはもちろんあった。大学入試の際にセンター試験の過去問を総当たりしていれば『TUGUMI』を見かけたし、図書館広報にもよく名前が載っていたと記憶している。しかし作品そのものを読み通したことは無かった。このたび…

名古屋観光(二日目)

8月18日、私はいつも通りに5時起きをした。もっと早かったかもしれない。仕事での早起きがすっかり身についてしまっていたらしい。部屋の窓からは隣の建物の壁しか見えなかったので、未明の空の徐々に白んでいく様が壁の色合いによってのみ感じられた。 …

名古屋観光(一日目)

こんにちは、副島湯呑です。 8月17日(日)、18日(月)を利用して名古屋を散策してきました。一人旅です。 行くと決めたのは先月末のこと。 社の方から夏休みを使うように散々言われていたのですが、僕みたいなコミュ障には気軽に遊べるような友達はい…

あんだすたんど

筒井康隆の「家族八景」の文章中、エディプス・コンプレックスという言葉を見た。父親を殺し、母親と結婚したオイデュプスの悲劇に擬えた言葉だ。聞き覚えはあるが、心理学的な内容は知らなかった。「家族八景」の中での使い方も、意味を知らないとピンとは…

八月十四日の備忘録

今日、清水義範と清水良典を混同していたのがわかった。清水義範という名前を先に知ったのだが、もしかしたら私が今まで見てきた清水義範のうち、何割かは清水良典であったかもしれない。私の読んだ小説指南書の作者と、宮部みゆきの『R.P.G.』に解説を載せ…

ネタ化する物語について

一日のうちの数時間を他者とのコミュニケーションのために割き、常にネット空間へのアクセスを維持し続けることが求められる時代にあっては、文化の役割も変質する。人は今や、感銘を受けた作品について他者と語り合うのではない。他者と語り合うための素材…