雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

アニメ『進撃の巨人』第2期〜第4期13話まで観た感想

10日ほど掛けて『進撃の巨人2期から413話まで一気に見ました。

2期から始めたのは、アニメの第1期を放送当時に観たことがあったからです。漫画も9巻までは読んでいたかな。ちょうどその頃に漫画を買う習慣がなくなってしまい、長らく続きを知らないままでいました。

 

 

 

2期でまず起こることはサシャの父親の登場です。その後の巨人との戦いやその周辺の事件、世界の真相や壁の向こう側の話が出たのちに、サシャの父親が再登場します。いつか登場する気はしていたのですが、まさにここしかないというタイミングでの再登場でした。

進撃の巨人』は謎が謎を呼ぶタイプの物語で、ある時点では重要人物の思惑が明かされないという場合が多いです。大きな具体例は第2期、第3期におけるライナーたちや第4期におけるエレンのことです。相手の思考がわからないことが物語の推進力になる。裏を返せば、謎が明かされない段階での感想は非常に言いにくい。観ているさなかで言えることはせいぜい「あれはどういう意味なのだろう」程度であり、観終えてからは思いっきりネタバレになるのでなかなか言えません。

そんな中でサシャの父親の話はこれで一区切りついたような気がするので、ある程度語れるのではないかと思いました。

 

 

 

4期、エレンは対立するとある人物に対して「お前と俺は同じだ」と発言します。

巨人を殺す誓いを立てたエレンは、所属部隊等の変遷を経ながら自由のために戦う。一方の人物もまた自らの目指す自由のためにエレンたちに立ち向かっていました。

この場合の自由は「恐怖から解放」と言えます。

お互いの戦闘の目的は恐怖の対象を撲滅することであり、そのためには慈悲を与えられない。相手のことは、自分たちとは違う敵と認識した上で倒すことになる。

413話で登場するサシャの父親による「森」の比喩は、この敵対関係を炙り出します。

サシャの父親は狩人で、森に住む動物を殺して生きていた。そうしなければ生きていけないためです。一方巨人に立ち向かう人間たちも、捕食の意味合いは違えど生きるためという目的は通じています。

生きるために戦う。戦うとは生死を分けることであり、スポーツとは異なり相手を殺さないといけない。誰かが生きることは誰かが死ぬことを意味する。動物と人間の違いは同種族を殺そうとするかどうかです。

人間だって、自分と近しい存在を突然殺したりはしない。それをしてしまう場合は、相手のことを自分とは違う存在だと意識する必要がある。自分たちと変わらない人間だとわかってしまえば殺すことに躊躇いが生じる。3期の最初の方でのアルミンの動揺はここにも通じます。たとえ人間であろうと敵であれば殺せてしまう。もしもこの世に生きる人々全員がその認識なら、その先にあるのは自分以外皆殺しという凄惨な未来です。アルミンの抱いた恐怖心は、その際限のない敵の認識によるものでしょう。



人の認識が誰かの生死をわけてしまう。第4期の展開そのものがこれを象徴します。第4期、開かれた世界に向けて行われる外交は、「誰を味方とし、誰を敵とするか」の話し合いです。方針が異なればそれまでの味方が敵になることもある。敵と見做された人は殺される。

4期で特徴的なのは、おそらく尺的な都合もあるのでしょうが、第1期から第3期までに浸透していた熱気を孕んだ躍動が極端になりを潜める点にあります。

この展開への示唆は、第3期の最後にきちんと触れられていて、作中の人物によってエレンたちの行動は「私情に流されている」とはっきり指摘されます。それに対するエレンたちの返答も歯切れの悪いものになります。

この物語はたまたまエレンたちに都合よく展開しただけではないだろうか。

視聴者にもエレンたち自身にも抱かせたこの疑念を、第4期は早々に突きつけてきます。それもただ露悪的にご都合主義をひっくり返すだけでなく、これまでの出来事の裏で起きていた歪みを作中のミカサやアルミンたちに自覚させることで、現実の息苦しさを視聴者にも理解できるようになっています。なんという親切設計。

それに加えて第4期ではエレンとほぼ同じ言動で行動する少女を登場し、さらにエレンのときにはほぼ登場しなかった、彼女にとっての敵側の人物をどんどん登場させるという様相。なんてことしやがる。



熱気に押し上げられていた第3期までと比べ、第4期はその熱が冷めたあとの展開が描かれる。しかし文字通りこれは同じ世界の出来事です。壁の中に閉じていた、ただひとつの敵を観ておけば済んだ物語の先で、視聴者は何を見ることになるのでしょう。怖い。続きが楽しみです。

 

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