雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

執筆あれこれ

内省記事だよ。

 どうして小説を書いているのだろう。

初めて公開したのは2ちゃんねるポケモン板というところで、固定ハンドルの人たちを登場させてバトルロワイヤルさせていた。

その理由はなんだったのか。書いたことに何の意味があったのか。

 

ここまではよく書いていることなので、今回はもう少し踏み込んでみる。

 

小学校の低学年の頃に、親に聞かされた話がある。

幼少期、仲の良い女の子がいたけれど、引っ越してしまったという話だ。

僕はその人の顔も性格も覚えていない。名前も忘れた。

 

時が経って、学校の生活に馴染めなくなった頃、僕は想像を働かせて、教室のドアから誰かが僕を助けに来てくれることを想像した。

最も多く登場したのが、引っ越したという女の子だった。

顔も名前も憶えていないので全て想像である。

ただ少女の形をした誰かが僕を引っ張ってくれることを想像した。

助けたあとに何をするわけでもない。

想像は学校の外側、裏手に広がる田んぼの中程でいつも途切れた。

僕はそこより先に何が広がっているのかを知らなかった。僕の自分での行動範囲はせいぜいその程度だったからだ。

自転車を手にしたら、市街地や隣町まで出かけることができるようになっていた。連れだってくれる友達もそれなりにいた。今どうしているかは知らないが。

 

僕が物語を空想し始めたのはこの体験が初めてだと思う。

僕が救われる物語だ。閉塞している僕を誰かが助けてくれる。主役は僕であり、実生活の自分を否定するために物語があった。僕は僕を護ろうとしていたのだと思う。

 

ポケモン板でのSSについて、実のところ内容はどうでもよかったのだと思う。

固定ハンドルの人たちを登場させて反応を見るのが楽しかった。

実は僕は当時、家庭内でゲームを捨てられていた。

当時のポケモンの新作がネット対戦可能なものとなるという情報が出回っていて、スレッドの皆はそれを楽しみにしていた。

僕は自分が遊べないそのゲームのことを楽しんでいるフリをした。居場所を無くしたくなかったからだ。

そして目立っている皆を登場させ、アピールさせるSSを書いた。だけど本当にアピールしたかったのは自分だ。自分がそこにいることを証明したかったのだろう。

 

その後、僕は創作の場所を度々移し、ブーン系小説というものを書き始める。これを本腰入れて始めるのは2012年、大学三年生のときだ。

先のポケモン板でのSSは、2005~2006年頃、中学三年生~高校一年生の頃の話である。高

校生の後半、大学生の前半は小説を書かなかった。読んだのも、数冊だ。

なんで本も読まずに小説を書いているのだろうと、たびたび振り返って不思議ではいたのだが、今なら理由がわかる。

僕は自己存在をアピールしたくて小説を書き始めている。

高校生の自分は大学受験の勉強を通しての自己を確立できていた。

大学生に入ってしばらくはそのイメージを維持できていた。

すっかり遊びほうけていた折、社会人を目前にして、学生時代が終わることにひいひい言っている頃にまた小説を書き始めた。

自分を見失ったので、過去の実績を引き寄せたのだろう。

そういえば自分は小説を書いていたじゃないか、という具合である。

 

大学四年の終わりに初めて文学フリマを訪ね、自分の作品を本にすることに興味を抱いた。

学生時代も終わるのだが、この趣味なら続けられそうな気がした。だから書き始めた。

初めての職場では図書館が近くにあったため、本をたくさん借りることができた。

趣味を続けるための読書にいつの間にかのめり込んでいた。

好き嫌いや嗜好もある程度把握でき、本好きな自分をようやく確立できたと思っている。

 

僕は何をする人なのか。何をしてこの場所にいるのか。

それが小説を書くことだとして、ひとつ答えが出せた。

ただ、小説には中身が必要になる。その中身とは何かといえば、まあ、伝えたいことなのだろう。

主題と言う人もいれば、雰囲気だという人もいる。主張。嗜好。性癖。いろんな言い方があるだろう。

 

最初の目的は、自分の存在をアピールすることだった。それは、自己が確立できた段階で終わった。消えたという言い方はしたくない。達成できたとしたい。

 

ここは、具体的に詰めていきたい。僕は自分のことがまだまだわからないでいる。できれば過去を責め立てるのではなく、僕にできることは何かを見つけていきたい。

 

私はいったい誰なのでしょうと、気取って質問してみたところで僕にはさっぱりわからないし、他の人にはなおさらだ。

気取ったことによる一時の充足と長めの恥ずかしさに襲われるだけなので、できるだけ控えたい。

できてないからこういう記事を書いたりするわけだけれども。