『悪女はこうして生まれた』
『美貌の持ち主であること』『男を魅了すること』『行動力と知性を伴うこと』そして『最終的に社会規範に反したこと』といった要件を基に、時代の『悪女』を突き詰めていく実験的な評論。そもそも残虐性を帯びたとんでもない人もいれば、本当に美しいだけで混乱の渦中になっていまった人もいて、ボリュームがあった。
忘れないように項目を上げていく。
- パンドラ
『パンドラの箱』の人。早速定義に当たるのか気になるが、その高い能力と美貌のせいで箱を送られたし、世の反社会的なものの起源でもあるから、らしい。
劉邦の妻。子の将来のために邪魔な奴を殺しまくる。四肢を切り刻んだ敵を息子に見せて発破をかけようとしたら残虐すぎて狂ってしまったり、血みどろである。
- アグリッピナ
ローマ。暴君ネロの母親だが、彼女を主にしてかくとネロも被害者に見えてくる。
悪いことは何もしていない。ただ美しすぎたゆえに玄宗を含め周りがおかしくなってしまった。
悪い人だ。平安時代の人物関係が複雑すぎていまいち掴めていない。
- イザボー・ド・バヴィエール
十四世紀のフランス。こちらも政略的な話がメインになるので人間関係が複雑だ。
- ルクレツィア・ボルジア
ルネサンスの黒百合。チェーザレの妹。だいたいチェーザレが悪い。
東山文化の開花の裏で暗躍した女性。あくどいことはするが、息子を思っての行動なのはよくわかる。
- エリザベート・バートリ
ハンガリーの伯爵夫人。鋼鉄処女の人。血みどろさでは呂后に近いが、完全に自分のためな分、純粋な悪の度合いはこの本でも随一。
- マリー・マルグリット・ドーブレ(ブランヴィリエ侯爵夫人)
ロココ時代の毒殺魔。しかし良い人に見えていた。
- 絵島
大奥の人。本質的には、自由になろうとしただけだった。
時代の変わり目にいて、悪人とみなされてしまった。
- キャロライン・ラム
バイロンに多大な影響を与えた狂女。
- ルー・ザロメ
彼女がいたせいでニーチェが「神は死んだ」に至ったのだと考えると感慨深い気もする。
ここまでくるともうほとんど現代だ。すれ違いの最期を迎える。
- アベ・サダ(阿部定)
阿部定事件について初めて知った。事件のことをちらっと調べてみれば、影響を受けた作品をいろいろ思いつく。