連載作『死にたがりの修羅』の話
昨年12月から、カクヨムという投稿サイトで小説を連載している。
『死にたがりの修羅』という作品だ。
高校三年の筧章汰は人間が化け物になる悪夢にうなされていた。
一年前の知人の死、それ以来見るようになった地獄のような夢が、ある日突然顕現される。
赤空の下、章汰は一人の少女と出会う。
戦う術を託してくれたその少女は、死んだあの人と同じ顔をしていた。
このあらすじのとおり、人間が化け物に見えるようになってしまった少年、筧章汰を主人公として物語は動いていく。
考え始めたのは昨年11月のイベントの帰り道であり、タイトルも全く変えていない。
1ヶ月近くかけて10万字を殴り書きし、手直しする形で投稿を続けている。
現在、第8話まで投稿を終えている。重要な部分はほとんど書きおえて、後は最終話である第9話にて物語を閉じれば良い。
他の投稿作品と同じように、この小説も自分の手で書籍化する予定である。
完成したらイベントで頒布する。元々はコミティアというオリジナル自主出版本の展示即売会に出てみたいと思っていた。
イベントの出店については今後の社会情勢次第ではあるが、書籍化の準備は連載と並行して進んでおり、そう遠くはないうちに発表できるかと思う。
もちろん、どんな形式の販売も連載を終了させてからのことになるので、まだ書くのには早いわけだけど。
人間嫌いという筧章汰の性質は昔の僕が持っていたものとよく似ている。
実際の僕は、その性質をずっと昔に封印していた。
そうしなければ、生きていくことが困難になることは容易に想像できた。
生きるために捨てたその価値観をこの度わざわざ拾ってきて、丁重に扱い、小説を書かせている。
そんな面倒なことを恥ずかしげもなく、半年間も続けてきた。
書いてみたらどうなるだろうかという、露悪的な思考が根本にあったことは否めない。
ここ最近は綺麗な話を書いてきたというのもあるし、その反動ともいえる。
そんな緩い希望はかなり前のうちに崩れた。
筧章汰という少年は物語が始まると僕の制御の枠を超えて、どんどんその性質を変えていった。
当初はどっぷりと闇に浸かるはずだったのに、いつの間にかいくつかの光が彼に差している。
その光が一体誰なのかは、今ここにはっきりとは書かない。読んでみたらわかることだろう。
それらの人物や展開は、当初想定されていなかったものだということだけは、憶えておいても差し支えないだろう。むしろある意味面白いかもしれない。
誰かに向けて小説を書くという手法はよく聞く話だけれど、
『死にたがりの修羅』における誰かは幼い頃の自分だった。
頑張れと言っても意味ないし、つらかったねと言うのも白々しい。
啓発書にもしたくなくて、下手に救いの物語にもしたくなかった。
まず僕は、彼が彼のまま存在できる世界を描いた。
そこへ障壁を送り込んで、転がして、あとは筆の動くに任せた。
彼のことを自分の似姿などとは思わず、一人の人間として尊重した。
もっと自分だけにぶつけるような物語だったのに、気がついたらあれこれ悩んでいた。
スケッチ程度の経緯や設定について書きながら掘り下げる形になり、歪にもなった。
凸凹になった筋道は書籍化の際に均すだろう。
適当に書いてきたつもりだったけれど、随分と野放しにできないものが多くなった。
言いっぱなしで終わりにもできない。
前よりも書くことはしんどくなっているけれど、必要だと思ってのしんどさなので、時間を割く。力を注ぐ。
まるで迷路のような作品になったけれど、止める気にならずにここまでこれて、本当に良かったと思う。