雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

『優しい衛兵と冷たい王女のようです』 第二十一話 設定資料

ブーン系小説板2で投稿しているブーン系小説、『優しい衛兵と冷たい王女のようです』の、第二十一話を作るに当たって作成した資料を公開します。

 スレッドに記載したことと変わりないです。重大なネタバレも無し。個人的なまとめ用として、載せておきますね。

 

おまけ 第二十一話設定資料(あくまで執筆当初のもの)

【メティス国内情勢】


●国王<教会


 数年前(305年)ラスティア国王ショボン、王女デレを招いた宴会にて、王女が魔人に襲われる。
襲撃の原因を解明できなかったメティス国王は多額の賠償金支払いを約される。
国内の富裕層への課税で賠償金は賄われたが、その対応に不満を抱いた富裕層らが国王を非難。
賠償金工面の割合が一等高かったメティス国教会が中心となって反国王派の旗手となり、富裕層を最大の教会領メガクリテに囲い込む。

 

●首都メガクリテの誕生


 メティス国王への不信が高まっていた一方で、隣国テーベでは女帝(国王)ハイン主導による産業革命が巻き起こっていた。
メガクリテ周辺には鉱山と森林が豊かに広がり、かねてより港を中心として交易が盛んに行われていた背景もあって、産業に係るテーベとの貿易が過熱していた。
メティス国教会による囲い込みも重なって、富裕層からの支援もあり、メガクリテは急激な発展を遂げる。
貿易の恩恵を受けたメガクリテ市長はこれを好機と捉え、309年に国王側首脳との講和会議を開き、首都としての権限を奪取する。

 

●現在

 テーベ国の産業革命の余波を受けて工場が整備、メガクリテ内部でも機械工具類を中心に工業が発展し始める。
また、魔人を排したテーベとは違い、魔人が積極的に労働に参加している。
もとより肉体労働を中心として活躍していた魔人は、工場内の労働でもその真価を発揮する。
今後順調に進めばテーベと並び立つ産業革命国となるかに思われた。
だが、309年12月17日未明、サイレンの音が鳴り響き、魔人が暴走。工業地帯に致命的なダメージを与えることとなる。
産業壊滅、それに付随する富裕層の乖離を恐れたメガクリテ市庁は事態の抑制に重点をおき、当日中にメティス国軍に応援を要請、合わせて義勇兵の募集を開始する。

 メガクリテを含むメティス国内では魔人排除の発想が勃興。
その一因として、テーベの人間第一主義が挙げられる。
テーベの産業革命に感化され始めたメティス国、わけても最先端のメガクリテでは、魔人がいなくても人間だけの力で生きていける、という発想が育ちつつあった。

 

 

【メティス国教会】

●役割


 魔人出現前からあった宗教と魔人出現後の宗教が融合、そのうち魔人を神の使いと崇める宗派がメティス国内において主流となる。
信仰に生きていた人々の祈りの場。生活の支えであり、儀式の場所でもある。
保有地である教会領で農作物を栽培し、貧しい人々に頒布する。また、時には魔人を駆使して公共事業の手助けをしたり、人助けを行った。

 魔人は神の使いであり、人間の正しい導き手ともされる。
魔人を従えて職業に従事することもあり、利益追求のための労働ではなく万民に資するための労働が善とされた。
余剰分のお金は教会への献金することで浄化され、より多くの献金を行った人の下にはより屈強な魔人との契約が可能となった。

 正史ではカトリックの腐敗が禁欲主義のプロテスタントを生み、結果としての利潤追求に正当性を与えることで資本主義の発展を促した。
しかし衛兵王女の世界では結果としての利潤は全て魔人への恩赦として教会に手渡されることになる。
見返りとして送られてくる魔人は人間に絶対的に服従する神の使いなので不満も抱かない。
より屈強ならより生活は楽になる。そしてむやみに闘争心をかき立てなくても、良い魔人が手に入ればより良い生活が送れる。
逆に悪事を働けば魔人を没収されて常人よりも酷い生活が待っている。
よって、闘争心は沈静化されていった。

 

●教会の魔人

 教会に管理されている魔人は基本的に無能力(出来損ない)である。
能力のある魔人は森に住んでいる。出来損ないの魔人が森から集められ、教会における奉公活動によって俗世への執着を払い、○○へと送られる。
それが魔人の究極の使命として伝えられていた。

 

【ブーン】


●現状


 309年12月21日、メガクリテに到着。メガクリテ市庁が募っていた義勇兵に参加する。
メティス国内でたびたび用心棒として活躍した実力がすでにメガクリテ市庁に伝わっていたため、簡易な面接だけで即採用となる。

 

●経緯

 サナ雨林の村で三匹のカエルのマークを目撃しており、そのヒントが隣国テーベにあることを知った。
自分の記憶の手掛かりになるかもしれないと悟り、目的地をテーベに定め、メガクリテから出発する船への搭乗を目指していた。

 エウリドメで猪の魔人が街を破壊する様を目撃し、魔人が崇拝されているメティス国内の混乱を予想。
旅の同伴者であるニュッの希望もあってメガクリテに移動し、魔人抑制に協力する。

 

●内情

 依然として10歳以降の記憶は戻らないまま、自分の強さの理由も笑顔の理由もわからないまま、記憶を知るための旅を続けている。
 エウリドメにて自立の意思を表明したニュッに期待を寄せる。もとより頼まれて一緒に旅していたが、ニュッを本心から応援しようと思ったのはこのときが初めてだった。
 それゆえに、エウリドメの惨状を目の当たりにしたニュッが、今まで旅で通ってきた街を思い、心を痛めているさまを辛く思う。

 しかし、ブーン自身は魔人を悪とは見做せないでいた。
魔人の錯乱の原因はサイレンであることは見て明らかであり、サイレンが予測不可能なうえ、暴れているときの魔人に意識がないことを鑑みても、魔人だけを責めるのは酷であるからだ。
付け加えていれば、彼のかつての経験が、魔人への悪感情を著しく削いでもいる。

 

【ニュッ】

●現状


 ブーンとともにメガクリテに入り、義勇兵として参加する。
 戦闘の実績はほとんどなく、また十四歳(現時点)という若さも考慮され、今は衛生兵として働いている。

 

●経歴

 309年10月末、ニュッに社会経験を積んでもらおうという育ての親デミタスの希望もあって、旅人ブーンと一緒に首都を目指していた。

 鴉の街ヘルセ、蛇の街パシテー、パシテー=アーケ間のサナ雨林に潜む虎の村、そして猪と栗鼠の街エウリドメを経験し、魔人と人々との様々な交流に触れる。
 良くも悪くも、人の行動を制限する幾多のしがらみ(あがめられ不自由する蛇、過去の内乱に敗れ森に隠れた虎、壁に閉じ込められた猪等)を知ったニュッは、
自身がデミタスへの恩義によってヘルセの街に自分を縛りつけていたこと、そしてデミタスが自分をしがらみから脱する後押しをしてくれたことを悟る。
その発見をエウリドメでブーンに告白し、ブーンを離れての自立の意思を宣言する。
 直後、サイレンを聞き、猪の襲撃で壊滅するエウリドメを目の当たりにする。
鎮火活動に協力したニュッは、その日の朝のニュースにて、メティス国内各地で同様の現象が起きていたことを知る。
自分が知り合ってきた人々の災禍を意識し、いてもたってもいられなくなり、首都での義勇兵募集の報を受け、ブーンに首都への移動を提案し、移動を開始する。

 

●内情

 今まで魔人と人々との交流を平和的に受け止めていただけに、内心の混乱は大きい。
魔人が危険を及ぼす生き物であるという考えが、ほかのメティス国内のニュースからも耳に入る。
他のメガクリテ市民と同様に、魔人排除の発想が育ちつつある。

 旅に出たことでニュッが抱いたのは社会への興味である(デミタスが希望したとおり)。
人々が交流する社会の一員になりたいという希望生まれたために、その社会を破壊する魔人への不信感はおのずと高まっていった。