雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

読書遍歴を思い起こす(2)

 2014年。社会人1年目。本格的に読書を始めようと思っていた僕は、偶然にも敷地内に図書館のある部署に配属されました。これ幸いと人生初の図書館通いを始め、司書さんにもいろいろと相談しながら本を探すようになりました。

 

2014年

 まずは自分が将来的に小説を書きたいと思っていることを明かし、関連する書物がないか相談。お勧めとして差し出されたのは『小説家になる方法 本気で考える人のための創作活動のススメ』(清水義範)でした。ここでお勧めされていたのが自分の好きな作品をとことん読むという活動。いろいろと細かいことはあれども、とにかく読むのが一番の近道。そんなことを学ばせていただきました。

 

 それからは恐れを気にせず耳にした本をとりあえず手に取るように。最近の作者はどんな人がいます? と尋ねたところ、『本日、サービスデー』(朱川湊人)や『夜の床屋』(沢村浩輔)『芥川症』(久坂部羊)を紹介されました。

 自分でも探してみようと書店に向かい、想像ラジオ(いとうせいこう)や『さようならオレンジ』(岩城けい)を手に取り、後輩の薦めで『銃』(中村文則)や『ビタミンF』(重松清)を読みました。

 ノンフィクションにも手を出してみたくなって『エンジェルフライト』(佐々涼子)を入手。一方では『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)を夏頃から読み始め、また一方では古本屋で30冊くらい買いだめして、執筆のために『ミステリーの書き方』(日本推理作家協会)や『物語工学論』(新城カズマ)『小説作法』(スティーブン・キング』などを読みました。

 

 ここに書いたのはほんの一端で、自分でも一番乱読していた時期だと思います。ここに挙げたのは比較的記憶に残っているのですが、その他記録にはいろいろ名前があれど、すでに薄れているものもちらほら。乱読はそんな良いものでもないな、と十月頃になってようやく気づきました。

 

 時間は前後するのですが、夏頃に同期の方から薦められて『11』(津原泰水)を読みました。そもそもは僕の作品を読んだその方が津原泰水さんと相性がいいかも、と教えてくださったのがきっかけです。津原さんの文章が染みいるようになったのは最近のことで、同期の言葉は当たっていたなとしみじみ感じております。

 

 乱読していた2014年、最大の個人的ヒットは年末に一気に押し寄せました。ひとつは浅田次郎の『蒼穹の昴』、もう一つは辻村深月の『冷たい校舎の時は止まる』でした。

 まさしく一気読み。本を読み出したら疲れを知らずに頁を捲り続けました。どこがどう面白かったかを細かく伝えるのももどかしいくらい、自分には合っている、そう直感してひたすら楽しみました。

 

 2014年に読んだ本についてはかつて一度記事にしてまとめました。別のブログだったので強調が想定と違う箇所もありますが、まあ概ね間違いはないです。読みづらいのはご勘弁ください。

byebyecloud.hatenablog.com

 

 

2015年

 そして迎えた2015年。今年も面白い本に会えるといいな、と始まったのですが、思ったほどには初動は芳しくなかったです。満を持して読んだ『満願』(米澤穂信)は肌に合わず、辻村深月だからと手を出した『ハケンアニメ』は、アニメ『SHIROBAKO』のクオリティの高さを再確認するのに終わってしまいました。その後、『スロウハイツの神様』(辻村深月)を読んで評価を改めたりもしました。

 

 その一方で、北村薫さんの作品をじわじわ読み始めたり、荻原浩の作品を見て凄く上品な笑わせ方をしてくる人だと感心したり、また古本屋で30冊くらい買い漁ったり、読書活動そのものはしていました。また、文芸誌にも興味を持ち始めて、しばらくの間『群像』を買っていました。選んだ理由は、『小説すばる』ほどには厚くなく、また個人的に時代劇が苦手なのですがそういった気配がなく、むしろぱっと見よくわかんない作品の並んでいるのがいいな、と思ったからです。半年くらい続けて、よくわかんなさすぎるのも問題だ、と思って止めてしまいました。

 

 執筆関係では大塚英志さんの名前を知りましたね。文学フリマの始まるきっかけともなったこの方。『キャラクター小説の作り方』や『物語の体操』を読み耽りました。物語を六つのパーツにわけてプロットを作る方法は、多分一部界隈では有名で、今日もネットのどこかで見聞されているんじゃないですかね。僕はそれを使って百個くらいプロットを作りました。大塚英志流ではこの百個のプロットを毎週作ることでやっと物語を作る下地ができる、みたいな解説でしたが、さすがにそこまでの熱意はありませんでした。

 

 年度の替わる3月末に出会いましたのが夢枕獏さんの『上弦の月を喰べる獅子』を、休日を利用して徹夜で読みました。これがまたとんでもなく面白かった。眠くなるという感覚すら忘れて読み続け、読み終えると同時に眠りましたね。満足感は半端じゃなかったです。

 

 四月になって乙一さん(『GOTH』)に挑戦し、山田詠美さん(『ぼくは勉強ができない』)にまともに向き合って爽快になり、五月には三島由紀夫さん( 

『不道徳教育講座』)で別の意味で爽快になり、漫画の方では『アオイホノオ』(島本和彦)や『ヴォイニッチホテル』(道満清明)を一気読みして、六月に『サラバ』(西加奈子)、七月には『ぼくは猟師になった』(千松信也)そして『旅のラゴス』(筒井康隆)と読み進めています。

 

ペースは落ちたものの、ある程度自分が好きそうなものを選んでから読むようになりました。興味が出てきたものからこつこつと。そして八月に『流』(東山彰良)と出会います。これは、昨年の感動とは全く別種の興奮を覚えました。そして抜群に面白かった。今の今まで続く自分の趣向の根底にはこの本がある気がします。

 

 2015年の後半は、2014年以降で出会った作家さんを読み直す時期になりました。筒井康隆七瀬シリーズ)や荻原浩(『僕たちの戦争』『噂』)、中村文則(『最後の命』)そして、北村薫(時と人三部作)です。特に北村薫は記憶に強く残っていますね。大切な授業の思い出のような、味わい深い作品でした。

 

 2015年の最後に読んだのは『楽隊のうさぎ』(中沢けい)でした。勉強の合間に読んだことはあれど、ちゃんと最後まで読んだのは初めて。思ったよりもずっとはっちゃけてて、面白かった。

 

 2015年の読書記録については以下の記事にまとめてあります。読み返したけど、だいたい感じていることは今と変わりないですね。

byebyecloud.hatenablog.com

 

 長くなりましたので、今日はこのあたりで失礼いたします。