雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

『百万畳ラビリンス(上・下)』(たかみち)

 

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス)

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス)

 

 

 

百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

 

  表紙絵が綺麗だなー、と思って手に取りました。畳と襖と、でたらめに配置された家具。窓の外は暗黒か樹海。不可思議な異世界に飛ばされた女子大生二人の脱出劇を描くSFミステリーです。

 超人じみた観察眼を持ちながら浮き世離れした思考を持つ礼香と、お世辞にも綺麗とは言えない見た目ながら強い思いやりの心を持つ庸子。絵の綺麗さもさることながら、メイン二人の掛け合いも面白く、心の通わし方やすれ違い方も伝わりやすく描かれている。脱出のための頭を使うだけのお話ではなかったです。

 ラストの展開の仕方が、ちょっと他ではあまり見たことのない形でした。僕なんかは悲しく考えてしまう。そしてあとがきには作者からの「最も自分らしい作品」との言葉。どういうことなのかちょっと調べてみたのですが、作者のたかみちさんは某成人向け雑誌で現実感がありながらも不思議と可愛らしい表紙絵を14年間も描かれているイラストレーターさんであり、今まで描いていた漫画も可愛い女の子のやりとりを眺めるような作風であったそうですね。じゃあ、作中で美少女の礼香があの選択をとる意味や、一度は綺麗な姿を手に入れながらも「こんなの自分じゃねえ」と元の姿に戻る庸子のことを考えると、なんだか怖い。ネタバレ感想は検索すればたくさんみつかるので、僕は敢えて書きません。

 いろいろ書きましたが、経緯など度外視しても、SFミステリーとしての完成度はかなり高いので安心してお薦めできます。