雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

取り留め

文章を書いているときに、何を書いているんだろう、って思う。

自分の書いた文章を眺めていても、どこに自分らしさがあるのかはわからない。

それでも書いているときは書きやすいときと書きにくいときがある。これもまたどうしてなのかわからない。

書きやすいなあと思っているところをあとで読み返すと、どうして自分の中からこんな文章が出てきたんだろうって思うことがある。残すこともあるし、消してしまうこともある。どれだけ読みやすくても、お話の筋と合わなければ消してしまうのだ。

 

話の筋といえば、自分はおそらく綺麗にまとまるお話が好きだ。

最後の最後に登場人物が報われるようなお話を好んでいるし、自分でも書きたいと思っている。

そしてやってみればこれがとても難しいとわかる。

登場人物の目標を設定して、報われる話として逆算していくと、浮かんでくるのは最短ルートなわけで、強引に繋いだそのルートは大した起伏もなかったりする。お話のために面白いところをどんどん削って切り開いていくようなものだ。

そのようなわけで、書きたいお話を書こうとすると破綻する。モチベーションが下がる。完成を前に筆を折る。言い方は様々だが現象は同じ事だ。このままでいいのだろうかという自制心が働く。

 

考えてみれば、話の筋をおって書きたい文章を制約するということは、自分の想定どおりにしか書けないわけなので、これは最初から相当練り込んでおかないと破綻する。

自分の求める物語を書こうとして、自分らしさが消えているのは本末転倒なので、他のところの自分らしさを見つけて書きたい。

そんな願いから自分の文章を見つめ直す。

得られる結論は最初のとおりだ。一文を抜き出しただけではよくわからず、面白いと思ったところは、どうして自分がそれを書けたのかわからない代物だったりする。

というわけで、自分はいったい何を書いているのかわからない、ということになる。

 

この点、上手い人は自分が何を書いているのかについて自覚的なのだろうか。

そこを基準として巧拙をおくべきなのかはとりあえず置いておいて、自覚的の方が書きやすい気がする。

困ったときは自分らしい文章を。なんだか甘言だ。そんな文章を狙って書けたら苦労はしない。

何かを書いているときに、たとえば情景描写から入るのか、人物の心情を描くのか、といった選択肢があるだろう。

そのうちのどちらかを選ぶのか。情景にしても、空なのか街なのか教室や職場なのか。心情にしても行動に表れるのか内面を掘り下げるのか抽象的か追憶的かでだいぶ変わってくる。

何を選んで書くのかが個性だというならば、知らなければ書けないし、念頭に置かないと浮かんでこない。

たとえいくら調べたところで、書いている自分は変わらない。興味のない事柄はどうしたって深くは書けない。

 

だからたぶん、僕の作品を読んで僕らしさがあると感じられるならば、そこには僕の知覚したことが描写されているのだろう。

意識的か、無意識的かは関係なく、読者は僕の描写のうち、重要そうなものを憶えてくれる。

重要そうって抽象的に言ったけれど、話の筋的に重要とか、それとも作者の心境を知る上で重要とか、物語の転機、内面の表出、いろんなものがあてはまるように思う。

 

気がついたら染み出している僕の個性。

そんなのがあったら楽で良いなと思う。

自分でそれが書けているかはわからない。

わからなくても、何かあるんだろうくらいの気持ちでないと続かない。

多分、個性を身につけたいの一点で身を粉にして書いているとしんどい。

目標達成を自分で判断する術がないからだ。

 

話は変わるけれど、書店へ行って漫画でも買おうかなとするとめちゃくちゃ迷う。びっくりするくらい迷って大抵結局1冊も買わない。

現実とは違う世界にいってあれこれするようなものには食指が動かなくなってしまった。

もちろん読み始めたら面白いんだろうと思うんだけど、その面白いというところに入り込むまでが難しい。

たとえ一度セッションが繋がっても、続かなかったら積ん読になってしまう。

なんで漫画なのかというと、僕の中では漫画はキャラクタを魅せるものだと思っていて、

そのキャラクタについて、僕自身があまり興味を持っていないように感じる。

どんな人物なのかってところよりも、普通の人がどんなことを起こすかというのを見てみたくなる。

話の筋書きの方が興味があるということなので小説の方が入り込みやすい。

もちろん無理なものもあるけれど、文字という形で抽象化されている方が親身に感じられる。

 

全然知らないことに手を出してみたくなるモチベーションのときもある。

そういうときは別の世界のお話でもついていける。

逆に、現実をみすげて疲れたなってときは、そういう別の世界の話をみてみてもいいのかもしれない。

今のところそのモチベーションが浮かんでいないだけだ。

 

話の筋を考えるのが好き、そして綺麗にまとめられるとなお良い。

さりとて綺麗にまとめるのは難しくて、まとめるために物語を紡ぐのは失敗の元。

物語を自分らしい文章で固められたら楽だけど、そんな文章には未だにピンとは来ていない。

楽は出来ないので物語を書くしかない、綺麗にまとめるのが難しくても、まとめないといけない。

取り留めもないことは今日のようなエッセイで十分だ。

長々書いたけど近道はなかった。明日から小説がまた書けると良いな。そんなことを考えている。