【感想】ゼノブレイド2
経緯
一年半前、Twitterのフォロワーからの紹介でゼノギアスをプレイし、半年ほど掛けて攻略した。
そのときの感想は自分のTweetを貼りつける形で残してあるので、この記事の最後に触れておく。
いわゆるゼノシリーズに手を出したのはそのときが初めてで、ストーリーの長さもさることながら、聖書の記述を根幹にした人のエゴや葛藤を描き、かつそれをロボットでの戦闘という熱い形にまとめあげていることが強く印象に残っている。
後半がまるまるダイジェストという、ちょっと常識はずれの構成も、ストーリーが形になっているから未完成とまでは感じなかった。
ゼノギアスをプレイしていた時期にちょうど、ゼノシリーズの最新作「ゼノブレイド2」が発売された。
ゼノギアスが終わったら次はゼノブレイド2、と考えていたのだが、すぐには手が出なかった。元々ゲームをする習慣がなかったうえに、途中でオクトパストラベラーに着手していたので、先延ばししているうちに年が明けていた。
ようやくゼノブレイド2を購入したのが先月の10日頃。本格的に腰を据えてプレイするゲームはオクトパストラベラー以来となる。
ゼノギアスや他のシリーズとのつながりは無いと聞いていたので、事前情報はまるで効かずにプレイし、昨日終えた。総プレイ時間は95時間。
少ないゲーム経験で語るのもあれだが、これだけ短期間の間に集中してプレイしたのは初めての経験だった。
頭の中に残っているこの物語が薄れないうちに、雑感ではあるが書き残しておきたい。
人間の二面性
物語のはじまり
物語は海の底から始まる。
世界中に広がる雲のような海、「雲海」に潜り、過去の遺物を掘り当てるサルベージャーの少年、レックス。彼は小島のような竜、セイリュウに乗って生活していた。セイリュウは巨神獣という種族で、雲海の上を何百、何千と生きながらえている。
大型の巨神獣はその体に都市を抱く。だが、巨神獣は年々その数を減らしている。人間の住める土地は巨神獣の上をおいて他になく、ゆえに世界は少しずつ、滅亡へと向かっていた。
巨神獣と同じように、この世界に存在する特異な存在として「ブレイド」がいる。彼らの多くは人間の姿をしており、人語を解し、同調をした人間と寄り添い生きる。言動も仕草も人間に近いが、命は永劫であり、その代わり同調者が死亡すると一旦コアクリスタルという物質に姿を戻す。新たな同調者が現れることで再びブレイドの姿に戻るが、その際には記憶はすべて消失している。
まるで人間から「成長」という要素を剥ぎ取ったかのような存在、それが「ブレイド」だ。
サルベージャーとして出入りしていたアヴァリティア商会の会長バーンより、仕事を紹介されたレックスは、かつて滅んだとされる国の名を持つ謎の組織、イーラの人たちと難破船へ向かう。そこでとある事件が起こり、命を落とすが、古の時代より眠りについていたホムラによって蘇生される。
ホムラの正体は、「天の聖杯」と呼ばれる伝説のブレイド。その力は絶大で、かつての古王国イーラを含め、三体の巨神獣を雲海の底に沈めたほどの破壊力を持つ。
ホムラの同調者であるレックスは、ホムラから楽園の存在を聞かされる。世界の中心に聳える世界樹、その頂に存在する楽園には広大な土地と緑がある。
伝説として語り継がれていた楽園の存在を、ホムラによって聞かされたレックスは、その存在を確信する。世界の滅亡から人々を救うために、レックスはホムラとともに楽園へ行くことを決意する。
イーラがホムラを狙っていると知ったレックスは、その手を阻み、セイリュウと、イーラの少女ニアの助けを借りて逃走した。
以上がざっくりとしたゼノブレイド2の導入である。基本的にはレックスを視点にして物語は動いていく。流れ着いた場所から始まる彼の冒険は、やがて世界を取り巻く巨神獣やブレイドの真実へとたどりつき、人間にまつわる大きな葛藤を目の当たりにする。
物語のスケール感は大きく、それでいて物語の主軸はレックスとホムラに据えられていてぶれなかった。多少強引に思える展開はあったけれど、やらされてる感はあまりなく、概ねストーリーに集中して楽しむことができた。まずはその点で満足したい。
敵組織のイーラや、その首魁であるシン。サイドストーリーとして彼らの物語があり、単体としても十分に語れるほどの密度がある。実際DLCで購入できるストーリーは彼らの物語だと聞いている。
とはいえ、物語の主役はあくまでもレックス。世界の全貌が見えないなか、不器用ながら戦いを始めたレックスを、物語は丁寧に追っていくことになる。
人間の二面性
レックスに大きな変化が訪れるのは、第三話。インヴィディアという国に流れ着いた彼は、傭兵団長ヴァンダムと出会い、戦い方の未熟さと、戦を逃れようとする態度の甘さを突きつけられる。
平和を望むといっても、人間の生活には争いがつきもの。イーラを含め、敵もまた人間であることを忘れてはいけない。概ねこのような趣旨をヴァンダムはレックスに語る。
正直、物語を終えた身としては、これほど含蓄のある言葉をこの時点で語ることができたヴァンダムに驚かざるを得ない。この先レックスを待ち受ける葛藤は、まさにこの「人間の二面性」に端を発しているからだ。
敵と味方、善と悪、信頼と憎しみ、進化と退化、本物と偽物、生きる希望と死ねない絶望、そして罪と罰。物語を通じて垣間見える対立軸のどれひとつとってみても、全ては同じ事象の表と裏だと突きつけてくる。
敵と味方に絞ってみても、誰かの敵は誰かにとっての救いであったりする。人間を裁くことは容易にはできない。そんな軛を無視して裁きを与える存在を、人は「神」と呼ぶ。神はどうしてこの世界を作ったのか。人間とブレイドはどうして存在するのか。答えを知るために、あるいは作中の言葉を借りて、答え合わせをするために、やがてレックスは世界樹を登る。
先取りしてどんどん書いてしまったけれど、全てを書いてしまうととっちらかるだけなのでこの程度にしておく。重要なのは「二面性」で、その端緒が見えたのはヴァンダムとの会話だった。物語の盛り上がり方も尋常じゃなく、まさに序盤の見せ場だった。正直取り憑かれたようにプレイを続けたのも、この第三話の引力が凄まじかったからだと言える。
ゲームという表現
極力露骨なネタバレをしたくないのでぼかしながら書くんだけど、あと個人的にはこの第三話でヴァンダムをパーティに加えられることが重要だと思っている。
このゼノブレイド2では掛け合いが豊富で、技名を叫ぶ上に、戦闘中に応援や快哉、激励など、本当に様々な声が飛び交う。それは技を繰り出すタイミングとなるゲームシステム上の都合でもあるのだけど、第三話ではこのシステムのおかげでヴァンダムの声を聞くことができる。
ヴァンダムがレックスを気に掛ける理由とか、ホムラとの掛け合いの微笑ましさ、それらが合わさってヴァンダムの人柄を伝えてくれる。
これはまさに、自分で操作するというゲームならではの表現方法だと思った。戦闘の体験と相まって、操作すればするほど人間性に深みが増していく。だから、第三話のラストの衝撃は大きかった。
ついでにいうとムービーを見返すと様々な伏線が張られていることにも気づいてさらに舌を巻いた。
戦闘に対する価値観の変革
漸進はNG
もちろんゲームはストーリーだけを追うものではない。戦闘システムがあってこそのゲームなわけで、その点の遊びやすさも重要な要素となる。
そしてこのシステムは、簡単だけど、めちゃくちゃ複雑、というか価値観の変革を迫られてかなりの苦労をした。
具体的に事例を交えて説明したい。
物語の中盤。テンペランティアという場所で暴走するロボットがボスとして登場する。ロボットと電源の二つに体力ゲージが振られており、ロボットばかり攻撃しても電源からの供給ですぐに体力を回復されてしまう。だからといって電源ばかりを攻撃していると、体力ゲージを半分削ったところで漏電が起き、大ダメージを食らってほぼ即死する。
よくよく考えてみると、そもそもちまちま体力を削るという行為そのものがNGなのだ。このことに気づくまでに数時間かかった。求められているのは、体力ゲージ半分以上を一気に削る方法だ。
その点、ゲームと睨めっこしていても何も見つからない。実はこのゲーム、操作説明は物語の途中で挿入されるのだが、その説明を見返す機能はついていない。本気でゲームだけで問題を解決したいなら、現れる説明全てを書き留める必要がある。当然そんなことを知らなかった僕はインターネットで検索し、「属性玉を割れ」という答えがサジェストされた。
属性玉? と検索を進めていく。単純だと思っていた戦闘システムが、次々と別の顔を見せ始める。
基本の前に
ゼノブレイドの戦闘はドライバー(ブレイドの同調者のことをドライバーと呼ぶ。ブレイドは言ってみれば魔力供給源)によって成されている。ドライバーは最大で三人まで戦闘に参加できる。このドライバーのオートアタックとアーツが、戦闘の主軸だ。
オートアタックは文字通り自動攻撃だ。主人公が敵と対峙し、Aボタンを一度押せばオートアタックは始動する。例えば武器が剣であれば、通常三段階のオートアタックがひたすら繰り返される。
一方のアーツはプレイヤーによる入力で発生する技だ。三種類セットすることができ、オートアタックによって溜まるゲージが満タンになれば発動できる。戦闘開始時はゲージは空だ。
そして、アーツを発動し続けることで必殺技ゲージが溜まっていく。この必殺技には、ゲージの溜まり具合によって段階が三つ存在する。段階を増やすごとに威力が増すが、その代わり発動までの時間が増えることになる。
この必殺技は、ゲーム内部ではブレイドの技として表現されている。魔力供給源のブレイドが前に出て大技を放つ。ここまで出来てようやく戦闘の基本の基本となる。そして、これだけでは序盤さえも突破できない。もちろん属性玉もまだ出てこない。
戦闘の基本
必殺技にはコンボが存在する。
前述したとおり、戦闘には3名のドライバーが参加でき、1人のドライバーにつき、最大で3名までのブレイドをセットすることができる。
ブレイドには8種類の属性がついており、必殺技にも同様の属性が付されている。必殺技のコンボ、「ブレイドコンボ」は、この属性によって決められた連鎖のことを指す。
例えば一段階目の「火」必殺技を放ったあとは、二段階目の「水」か「火」がコンボのつなぎ手だ。その二段階目の後には、三段階目の「火」や「光」などが続く。
この三段階目の必殺技をくりだして始めて属性玉は付与される。繰り出した必殺技に耐性がついたことを示すのが「属性玉」なのだ。
この属性玉は、チェインアタックで割ることが出来る。
チェインアタックとは何かというと、キャラクターどうしの連携技のことだ。戦闘中に、アーツゲージとは別のゲージが少しずつ溜まり、満タンになるとチェインアタックを発動することができる。実体としては、ブレイドによる攻撃であり、そのブレイドの属性によって属性玉にひびを入れることができる。最低でも2回、最大でも3回の攻撃により、属性玉は破壊され、このとき敵には大ダメージを当たることが出来る。
以上を簡単にまとめてみる。
まず、戦闘に繰り出せるキャラクターは3人。うち1人が操作キャラで、2人はNPCだ。
この3人でオートアタックをし、アーツゲージを溜める。3人のうちの1人が、必殺技ゲージが溜まったところで一段階目の必殺技を放つ。
プレイヤーは属性を意識して二段階目、三段階目と必殺技を放ち、属性玉を付与する。
この属性玉を、テンペランティアであれば3つ付与するまで続け、体力ゲージが半分になる間際にチェインアタックを発動して、反対属性をぶつけて素早く割る。全て割って大ダメージを与え、敵のHPを半分以上削る。
わかりづらいと思うけれど、これ以上うまい説明が思いつかない。何を言っているのかわからなかったら申し訳ないけれど、プレイしている僕もわけがわからなかった。
この属性玉を理解して始めて戦闘の基本となる。応用ではない、という意味での「基本」だ。この戦闘システムを理解していないとテンペランティアは突破できない。ちなみに、テンペランティアでのボス戦は、全10話中の第4話である。感覚的にも、ここからが本当の戦闘という感じだった。
この第4話以降も戦闘に追加要素はあるが、属性玉で体力を半分以上削るという考え方は変わらない。ラスボスといえどもそれは同じだった。
なお、言い忘れていたけれど必殺技は毎回タイミング良くボタンを押さないといけない。タイミングを誤ればゲージは溜まらないし、チェインアタックにいたっては強制終了となる。一秒たりとも気が抜けないのだ。
システム構築と崩壊
この遠大な戦闘を理解する上で、価値観の変革が起こる。体力ゲージを回復させても、即死ビームで終わる。だったら体力ゲージを見つめる必要も要らない。死はシステムで回避しておけばよい。
先ほど、戦闘に繰り出せるキャラクターは3人と説明した。
このキャラクターにはそれぞれ得意とするロール(役割)がある。攻撃、防御、回復だ。防御ロールのキャラクターがひたすら敵の攻撃を浴び、回復ロールのキャラクターが全体回復を繰り出し続け、攻撃ロールのキャラクターが黙々と攻撃を続ける。
このロールを意識してから戦闘の見方が変わる。
キャラクターを目で追っても意味はない。ロール3人のうち、2人は不随意だ。レックスの得意とするロールは攻撃と決まっているので、必然的に防御と回復が不随意のキャラクターとなる。
防御には敵の攻撃を集中させ、逆に回復は敵の攻撃を食らわないように装備を見直し、全体回復をかける。体力はじりじり減っていくようでは話にならず、常に満タンにリセットされるようにシステムを構築しなければならない。
これがゼノブレイド2の戦闘の根幹だ。ロールプレイングとはよくいったもので、役割を意識することでキャラクターはその真の実力を発揮でき、役割を無視すると即死する。
テンペランティア以降も同じで、システムの崩壊は一瞬にして訪れる。少しの綻びが取り返しのつかない結果を生むことになる。それゆえに、絶対に途切れないシステムを見つけていく必要がある。
なんだか示唆に富んでいるような気もするけれど、多分考えすぎでしょう。
最後に
聞いた話によると、ゼノブレイド2のストーリーにはかなりの戒厳令が敷かれているのだという。
個人ブログあたりだと書いている人もいるけれど、ホムラを含め、登場人物それぞれの真実は公式としては秘密のまま、スマブラにあるコレクションでも秘密にされているらしい。スマブラは持っていないから、噂にすぎないけれど。
なのでぼかしたまま書くけれど、かなり良かったです。演出の一つ一つに熱がこもっている感じがとても良かった。
スケールはかなり大きい。最終的に明らかになる世界観は壮大で、彷彿とさせるだけの場面も多々あった。その全てが明らかになったとは言えないし、正直何を考えていたんだろうって思うキャラクターもいる。
それでも話を追うことがつらくなかったのは、レックスの目的が終始はっきりしていたからだと思う。
イーラや法王庁、各国の思惑など、複雑に絡み合う世界観の情報量は壮大で、時に目移りする。そんなときは主人公の立場を考えてみるといい。レックスの考えは常に人間を救うために楽園を見つけることだった。
相対する敵には、人間を信頼できないという共通項がある。人間の醜い姿を知った者たちがレックスを阻む。人間を超克したはずの神でさえも、人間への疑問を捨てきれずにいた。
その神に向けて、レックスはある声を掛けをする。最後の戦いに向かう直前の一コマだ。
「生んでくれてありがとう」
多分、ゼノブレイド2をもう一度プレイするってことはないだろうし、ストーリーの記憶も薄れていくと思うけれど、この台詞だけは忘れないと思った。