雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

【感想】オクトパストラベラー【裏ボス前・ネタバレあり】

まず8人の登場人物からひとり、「あなた」を選ぶ。8人のそれぞれに旅をする理由があり、目的地も異なっている。ストーリーは独立している。ひとりひとり攻略しても、気ままに旅をしても構わない。

現実的な話をすれば、戦闘を効率的に進めるためには8人全員を仲間にし、それぞれなるべく同じくらい強く育てた方が良い。ただ、正解はない。話の進め方において、選択肢が広く与えられている。それがオクトパストラベラーの一番の特徴だった。

 

「あなた」と表記したのはゲーム開始時の説明文に即している。はっきり言えば主人公なのだけど、選択肢の豊富さを謳っておきながら、主人公はストーリーをクリアするまでパーティから外せないという制約がある。

ゲーム全体を見返すと、この制約だけが異様にうつる。本当に自由度が高いならば、誰を主人公にするのも自由にしてもいいだろうし、ストーリーの内容を踏まえても、決して難しい話じゃない。先に述べたように、ストーリーは8人全員独立している。ストーリーチャットという形で多少の交流が描かれているものの、アーカイブすらも設けられないように、本当におまけ程度に捉えるべきもののように思われる。

 

どうして主人公が変更できないのか。それはひとえに「あなた」だからだろう。自分自身が世界に入り込んでいる、その没入感には拘りたかったのだと思われる。

賛否両論あるけれど、僕としては作品の困難度にそれほど作用しているとは思えない。

 

戦闘面での最適解はジョブと装備が決める。特に全員の第1章をクリアしてから手に入るサブジョブは、戦略の幅を一挙に広げることができる。

しかもサブジョブは酒場などにいかなくても、冒険の途中でどんどん変えることができる。ダンジョンの中でも、敵の弱点に偏りがあれば、その弱点を突けるジョブに変更することができる。その自由度の高さに気づくことができるかが一番の壁だった。

 

戦闘はやっていてとても気持ちが良かった。力で押し切るには固すぎる。弱点をつくために、どのような道筋で行くべきか、道中で考えながら進む。一度ゲームオーバーになったら一旦引いて立て直す。

当たり前のことなのだけど、自分で考えることは楽しいし、その戦略の幅も広い。

実際、レベル上げが必要になった場面はほとんどなく、大抵は技の組み合わせで挽回できた。

 

全員分のストーリー、第4章までをクリアするのに掛かった時間は60時間だった。

単純に8で割れば7.5時間。戦闘を抜いて話だけを追えば3時間くらいだろうか。

第1章から第4章まで、すべての話が充実しているかというと、さすがにそんなことはなかった。

主人公の人となりをしめす第2章が最も顕著で、起伏のないものも目立つ。

第3章では目的の違いこそあれ、裏切りがやけに目立つのが気になった。それはそれで面白かったけど……

もともとひとつのストーリーであったものが、うまくまとまらず、8人分に解体していると聞いたので、もしかしたら、元々のお話では人と人の信頼が大きな要素だったのかも知れない。

テリオンやオルベリクのストーリーでは裏切りと信頼が大きなテーマになっている。プリムロゼもオフィーリアも裏切りを前に一度は倒れ、アーフェンは裏切りを前に苦悩した。

重要ではないと断言しつつ引用するのは恐縮だけど、テリオンとオルベリクのストーリーチャットの中で、友の裏切りを前になおも信頼しようとするオルベリクに対し、テリオンは「共感はできないが理解はできる」と告げる。

その理解は、旅を通じて得たものなのだろう。お互いのありようは真逆だけど、傍にいることで、理解は進む。

いろんなストーリーチャットがあるのだけど、僕が一番印象に残ったのはこの会話だった。

 

たぶん、8人全員を全く関わりのない人物にするなんて冒険(企画的な意味で)は普通できない。戦うためだけの繋がりをそのまま見せて、まとまりなく終わってしまう恐れがある。

だけど、その繋がりは決して薄いものではないんじゃないかと、この会話を見て思った。共通点がなくても、理解することで視野が広がる。自分と関わりのない場所についても思いを馳せることができる。

そんなことを思ったりもした。

 

僕は主人公にトレサを選んだ。

手記に奮起された冒険の最後は、自らの冒険を他者に託す形で終わりを迎える。

図らずも、様々な冒険を見せてくれたこのゲームのテーマに最も近づくことができた気がして、ひとり感慨に耽っていた。

 

裏ボスまではまだまだあるし、上級ジョブも解放していないので先は長い。

すぐにやるには、ちょっと立て込んでいるので、ゆっくりやっていきたいです。