【感想】狭い世界のアイデンティティー
何の気なしに見始めた『ハイスコアガール』のアニメから、作者の押切蓮介に興味を抱き、月刊モーニング・ツーで連載中の『狭い世界のアイデンティティー』を購入した。
本当は学生の頃に『ミスミソウ』を読んだので初遭遇ではないものの、僕の頭の中では何故か作者が押見修造ということになっていたので、今更ながらググって混乱した。絵やテーマからして全然違うのになんでだろうね。
さて、『狭い世界のアイデンティティー』。腐りきった漫画業界の中でのし上がるために、暴の力で邁進する新人漫画家及びその周辺の物語。
バイオレンス漫画ということで何もかもが暴力的になっている。それはそれでバトル漫画みたいで面白いのだけど、本当の敵は承認欲求。創作者ならば誰もが望む、自分のアイデンティティーを確立するための根拠のようなものを探し求めて争い合う。
特に目立つのがツイッターの活用・悪用の数々。
承認欲求を満たすためのあの手この手を駆使する人間模様は地獄絵図そのもので、それでも共感せずにはいられないのがおそろしい。
ツイッターが日本で異様に流行るのも、肥大化した承認欲求が増幅させているのだろう。
いいねの数こそ心の潤滑剤! バズらせ音頭を踊るに踊る!
のし上がれるのはほんの一握り。売れる本を作りたい出版社と、売れることで自己を世界にアピールしたい創作者のせめぎ合い。暴力はないにしろ、似たような妬み嫉みの世界はあるんだろうなと察する。そしてまた、どこまで作品が世に出されても同じ苦しみがついて回るのだと思うとゾッとする。
逆に暴力で全て解決したらどれだけ楽なんだろう。えぐいのだけどスカッとするのはそういうわけなのだ。
あと別のことだけど、押切連介の友人、清野とおるの『東京都北区赤羽』のドラマを今年の頭頃に観たのはタイミングが良かったのかも知れないね。
狭い世界のアイデンティティー(1) (モーニングコミックス)
- 作者: 押切蓮介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/04/21
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (2件) を見る
連載中の作品の感想を書くのはめったにないことなので僕の承認欲求も満たして欲しいです(終わらない苦しみ