【感想】月曜日の友達(阿部共実)
舞台は中学校。主人公の水谷は、大人と子どもの境目で、周りの変化に焦りつつも目を背ける。何も考えずにいられた時を懐かしみ、今いる場所の窮屈さに嫌気が差して夜の街を走る。
学校でも姉 家でも姉。姉に似てないのがそんなに変なのか。
私は月曜日が嫌いだ。
また慣れない中学校の日々が始まるから。友達と遊びも運動もできないから。
姉が家に帰ってくるから。家にすら居場所がない曜日になったから。
私はどうすればいいんだ。
この気持ちをどうすればいいんだ。
中学生になった途端気づいた。この町は窮屈すぎる。道も世界も生活も。
なにひとつ気にせず考えず、動きたい走りたい 飛びたい叫びたい。
血液をめぐらせたい、体熱をあげたい、体と脳と水分を燃やしたい。
どこか。
だれか。
夜の学校に侵入した水谷は、校庭でカラフルなボールをしこたまぶちまけている月野と遭遇する。あることに協力するために、水谷は月野と約束を交わす。月曜日の夜に、誰にも言わず、ふたりだけで会うという約束を。
同級生が急に大人びている中、自分だけがいまだに子どものままでいるような感覚。
焦りや不安、周りへの羨望と、自分への憤り。
覚えがある。もうずっと昔になってしまったけれど、僕も似たような悩みを抱えていた。
長いこと抱えていて、解消したかどうかもわからないうちに、考えないようになっていた。
とても苦しんでいたような気がするのに、今は何も感じなくなった。何の刺激も得ることがなければ、思い返すこともなかったのだろう。
中学生の頃の僕は、この気持ちに値する言葉を探し続けて結局見つからなかった。そのまま忘れたことにしてしまったのだ。
思い出すことができた喜びもちろんある。
そしてそれ以上に、こうした気持ちの描かれていることが嬉しい。
なぜ私はみんなみたいになれないんだろう。
どうやってみんな大人になったんだろう。
月野だけは大人にならないでくれ。
時間が絶え間なく流れていくことに、それでも抵抗する姿が、あまりにも瑞々しくて、喉の奥の方が痺れた。
全2巻。読むことができて良かったです。