雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

【文フリ感想文】清楚さの裏側に見られ、見つめられる――『スロウレイン』(青樹凜音/月と缶チューハイ)

 最初に読み終わった作品の方がTwitterをしていないみたいでしたので、いつものようにTwitterに垂れ流すばかりでなくブログにでも書き置きしておこうと思い立ってみました。

 

 「月と缶チューハイ」というサークルで頒布されていた、青樹凜音さんの『スロウレイン』です。

 そもそも最初に「月と缶チューハイ」の方(青樹さんかどうかは確認不足です)が僕のブースにお立ち寄りくださいまして、ほぼ直感で拙作を買ってくださったお礼返しの意味合いで寄らせていただいた次第です。

 

 以下、『スロウレイン』について。

 山の神木の木霊である「花音」は、とある辺鄙な神社に守り樹として挿し木された。最初のうちは不満を抱いていたものの、手入れをしてくれる巫女の結衣の真面目で清楚そうな雰囲気に好印象を抱き、心惹かれる。山での記憶は次第に薄れ、結衣への感謝を初めとする感情が芽生え始め、誰かと触れ合いたいと願うようになる。

 やがて始まる、結衣や他の妖たちとの接触。話し始めて初めて、本心や翳りが見えてくる。いつでもはぐらかしたり、花音をもてあそぶような結衣に対して、花音も段々と欲望を持ち始める。

 

 それは嘘だと私にも分かっているのです。本当に毛嫌いしているならば近寄ることなく離れる。ましてや会話などはしない。だけどこのように嫌みを口に出しながらも、付かず離れずの距離を保つ。その理由はただ一つ「私を手放したくない」から。

(スロウレイン 後編――2)

 

 

 冒頭から死を予感させているように、退廃的な雰囲気が物語中に感じられます。喋り方には軽妙さが窺えるものの、見えてくる物語はどことなく湿っぽい。淡い表紙や丁寧な文体には清潔感があるけれど内容は意外と突っ込んでくる。

 そんなギャップをおっかなびっくり楽しみながら、最後までじっくり読むことができました。

まあそんな驚きも、ちゃんと裏表紙の「同性愛官能小説」って文字を読んでいたらもうちょっと和らいだのかもしれませんが。

 

 ところで最後の方、割と重要なところで文章が途切れているような・・・・・・敢えてでしょうか、それともただのミスでしょうか。ちょっと気になるので、時間のあるときにサイトの方を確認してみようかな。

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