読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。創作サークル綾月所属。個人サークル鳴草庵代表。

ミート・ザ・ビート(羽田圭介)

感想

 

ミート・ザ・ビート

ミート・ザ・ビート

 

  勉強の傍ら警備員のアルバイトに勤しんでいる浪人生の彼が、ある日古いビートが譲り受けられることになる『ミート・ザ・ビート』と、身長190cm超えの大柄な主人公が競馬と遭遇する短編『一丁目一番地』の二編を収録した一冊。

 『ミート・ザ・ビート』は車の話。車を持っていない頃の主人公はバイト仲間の車内を観察し、ビートに乗るようになってからは馴れない運転に齷齪しながら車社会に入り込んでいきます。勉強は全然上手くいかないし、偶然芽生えた恋心もおそらく上手くはいかないし、状況は切迫していますが危機感はあまり感じられません。それよりも今は、車を通して生きていく上での行動範囲が少しだけ広げていく、そんなお話なのですね。

 『一丁目一番地』の方はわずか30ページほどの短編なのですが、競馬の異様さをレースの外から観察したり、独特なユニークさで状況を語らせたりしています。決して競馬にのめり込んで堕落していくようなお話ではありません。こちらもまた、身近にあったのに気づいていなかった異様な世界を発見して、ほんのちょっと視野が広がる。短い分、洗練されていて、僕はこっちの方が好みでした。

 それにしても、羽田さんが芥川賞を受賞したときには読もうと思っていたのにもう半年も経ってしまった。あっという間だ。なるべく読むようにはしたいけれども。