雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

第二十一回文学フリマ東京参加レポート(本音編)

 はい、こんばんは。雲鳴遊乃実です。

 このたびは個人サークル鳴草庵名義で文学フリマ東京に出店いたしました。

 当日は雨もぎりぎり降らず、会場にもたくさんのお客様が押し寄せてくださり、賑やかな文学フリマだったなあと感じております。

 

 さて、当サークルで販売したのは、短編集『翔兎乃音』と、無料頒布の折り本『ヘヴィ・ムーン』の2つです。

 売れ行きの方はと言いますと、『翔兎乃音』の方は、見本で提出したのと、自分用に保管したのを除いて、30冊中13冊捌けました。『ヘヴィ・ムーン』の方は自分用除いて、35冊中34冊、つまり1冊だけ残ってほかは売れましたね。

 

 さてと、

 

 ごめん、ぶっちゃけもうちょい売れると思ってた!

 

 いや、もちろん出店している最中に気づいたんですよ。右さんが来たのが始まってすぐの11時半頃。それから30分近く、誰も寄らず、視線も飛ばしてこない時間がありましてね。

「あ、これハードル下げないとあかんやつや!」

 そこからもうすでに脳内では反省会議は始まっておりました。「もっと宣伝しておくべきだったんじゃねえ?」とか、「掲示のレイアウト考えた方がいいな」とか、反省しつつ、思いついたことはその場で実行ですよ。できることはとにかく何でもやっちゃおうかなって。

 その結果生まれたのが本をくるくる回転させて積み上げたあれです。来てくださった方はわかると思いますが、『翔兎乃音』は回転して置いてありました。とりあえず見た目にインパクト持たせて視線集めねえとって考えたのです。その点では上手くいった気がします。作っている最中も視線が集まってきましたし(「何やってんだこいつ」って感じの視線でしたが注目された点では同じです)、「すげえ!」って言ってくださった方もいました! 去るなよ! 来いよ!

 反省というか、気づいてしまったというか、もっとアピールしていいんじゃね? ってのも思いましたね。といいますのも、お昼過ぎになったらサークル巡りのためにエンタメ小説系の列を離れ、ほかの場所へ行ったのですが、活気がね、かなりばらつくんですよ。主観なんですけど、1FだったらDEFあたり、2Fは全般元気に感じました。みんなね、立ってんですよ。呼び込んでるんですよ。「うわすげえな」って。B列戻って、「なんやここめっちゃ静かっ!」って。

 後になってやっぱり気になって、カタログぱらぱらめくっていて、ちょっと思ったんです。これが一概に言えるってわけじゃないだろうけども、1FのDEFって、ジャンルで言うと、ファンタジー、ミステリー、青春・学園、そしてライトノベル。たぶんだけど、売り出すポイントが絞りやすいんじゃないかなって思ったんです。ミステリー好きならとりあえずミステリーのとこ行くでしょ。で、売っている側もミステリーが好きでミステリー系の作品売るでしょ。嬉しいじゃないですか。そりゃあ盛り上がりますよ。

 2Fが元気なのも、この文脈で解釈しますと、小説以外のものも売られているから、多様性があって、狙い定めて歩きやすくて、新規開拓もしやすくて、活気になるんです。

 それじゃBは何かと言ったら(厳密にはBとCの向かい合っていた側ですが)、大衆小説です。これはもうね、僕もそう思ったからこのジャンルを選んだのですが、「他のジャンル選びようがねえな」って人たちが集まっているんじゃないかなって気がしました。だから、傍目には「どんなの売るんだろう」っていうのがいまいちわからない。

 もちろんBの中にも活気あるところはありました(ちなみに呼び声かけてたりお客さんよく並んでいたりしていたところを活気あるところと判断してます)。その中で自分らなりの特性を売り出せれば、目立つし、コンセプトが伝わってくるんです。そして、人が寄ってくる。

 

 人をどう寄らせるかっていうのを、出店しながら考えていたんですけど、結局ちょっとでも興味引いたら見てくれる気がしたんですよ。少なくとも、「お、いいな」と思った人は二度見します。興味なければ見ないか、一回です。一回見て、反対側見て、去り際にもう一回見てきた方は興味ちょっとありっぽい。この段階で声をかけると、半分ちょいくらいの方は止まってくれます。もうちょっと押せば来るか、苦笑いで会釈して去ります。

 少なくとも睨まれたり舌打ちされたりってことはありませんでした。考えてみればですよ、わざわざ目線合わせておいて舌打ちなんかするわけないんですよ。嫌だなって思ったらそもそも見ないんです。だって、売っている奴のことなんか知らんもの。

 面白かったのは、一回素通りして、二回目にくる人がいたんです。それで、寄ってくれる。「お前さっき素通りしたやんけ!」とは突っ込まずに、とりあえずは素知らぬ顔して「どうぞお読みになってください~」って振ってみるんです。そしたら、案外読んでくれるんです。

 この辺の心情は、綾月ブログの方でも書いたけど、人それぞれです。正直さっぱりわからない人もいました。10分くらい立ち読みしたけど折り本も受け取らずに去って行ったり、五回くらいブースをチラ見しつつ横切ってようやく来てくれたり。

 そういう相手にどうするかっていったら、こりゃもう誰も彼も同じように丁寧に接客するしかないわけです。驚いたり不思議がったりしている暇合ったらとっとと次売った方がいいんです。

 ちなみにさっき、活気あるサークルは立っているみたいなことを書きましたが、これには実は理由があります。僕も売るとき気づいたのですが、売れると、嬉しいんですよ。嬉しいとき人は立つんですよ。座ったまま万歳する奴はいないでしょう。それと同じです。「いいんですか!」と言って飛び上がって、頭何度も下げて「ありがとうございます!」って、そうなっちゃうんですよ。だって、びびるもの!

 

 まあ、そんなわけでじっくり売っていたんですけどね、中には質問攻めを好む方々がいるわけです。すぐ答えられれば嬉しいんですが、難しいこと聞かれたら「わあ」となります。

 綾月ブログでも書きましたが、僕の場合は「これは結局どんな本ですか」って言われたときがきつかったですね。どんなって! いいから読めよ! ってわけにもいかんのです。説明できなきゃいけない。

 でもな、だからな、大衆小説なんだってば。説明できねえからここ居るんだよ。お前大衆小説って何だって聞かれて答えられるんか! って、これもやっぱり言っちゃだめ。

 何を言う買っていったら、相手が聞きたいところ。本の雰囲気、コンセプトです。実際そのあたりの手がかりが全然無いと手を出しづらいんでしょうね。見本も一応出してありますが、読まない人だって大勢居るんです。僕だって読まねえし。

 だからコンセプトは作っておくべきです。さっきも言ったけど、コンセプトがそのまま本のアピールポイントですからね。本も呼びやすいんです。

 時間は飛ぶけど、懇親会のときに自作品を紹介したい人はアピールしてねってなったんです。僕は行きませんでした。性分じゃないっていうのもありましたが、それ以前に、「何言ったらいいかわからん」ってのがあったんです。言いたいことは、要は上に同じです。

 

 つくづく、思った。売りたかったら、いや、そんな俗っぽい言葉を使わずに言えば、読まれたかったら、ただ黙っているだけじゃどうにもならないんです。作者の側が手を尽くしても、読者の側が手をこまねいているのは、よくないんです。架け橋を渡すのに一方の土台だけ作っても意味が無くて、もう一方の陸地でも土台を作ってあげなくちゃいけない。

 もちろん世の中にはそんなことぜってーしたくねえって人もいて、自分で書いた文章ネットで晒して好きな人が読んでくれればいいやって人もいるんです。大勢います。でも、そういう人たちは文学フリマにはあまり出店しないんです。紙の本にしたいっていう欲求はありましょうが、売りたいって意欲はないだろうな。

 で、僕はどうかっていうと、やっぱり売りたいんですよ。というか読まれたい。だから一番最初に書いたように、13部売れて、「もうちょっといきたかった」って思っちゃってるんです。ここ、隠しても仕方ねえなって、思うんですよ。趣味の方まで引っ込み思案気取ってるのもアホらしいし無意味だしお前そういうの嫌ででも実際にはどうしようもならない性分があってそういうの超克したくて小説書いてるんじゃねえのかと。

 

 後半になったらちょくちょく立つようにしました。お客さんがこなくとも、下から物欲しげに視線飛ばすよりは真横から飛ばされた方が自然だしお客さんも自然かなと思って、立って、「こんちはーどうぞー」ってやってみました。功を奏したのかどうかはわかりませんが、じわじわとは売れておりました。たぶん、ツイッターもやっておらず、本当に僕のこと知らない人たちが過半数です。というかSNSでの知り合い来ねえな! 呼びかけたり確約取ってねえから当たり前なんだけど! 俺お世話になってもリプ返し忘れたりブース寄り忘れたり普通にするからな! そりゃ、「やるよー」って言うだけじゃだめでしょう。俺がお客さんだったらたぶん、そういう人は、よほどのことが無い限りは寄らんし。

 

 とはいえ、ね、僕のことを雲鳴遊乃実だとわかって来る人もいたんですよ。どんな人かって言ったら、前述した通りサークルでお世話になった右さんだったり、クランチマガジンで僕の書いたロックのブログ読んだって言う木村椅子さんだったり(ちなみに書いたのは2014年の6月です。1年半前! こっちがびっくりですよ!?)、ふらっと立ち寄ったマルカフェの店長さんだったり(この度は寄れずにすいませんでした!)、本の杜に遊びに行ったときにいろいろ語ってくれた586さんだったり、初めて文学フリマ行ったときに寄ってみてそれからツイッターでもフォローしている小鳥遊さんだったり(WYSIWYG?面白かったです!)、それくらいか。

 わかりますかこれ。みなさんツイート読んだだけじゃないんです。この人たち全員、僕が何かしらをした結果、文学フリマっていう大きな会場で、わざわざ僕のところに来てくれるくらいには僕のことを気にとめてくださった方々なんです。いやもう、これは本当に、感謝なんですよ。だって僕別に文学フリマに出店したときに寄ってくれたら良いなとか考えて行動していたわけじゃないんです。むしろそんな下心があったのはツイート流していたときで、それはあまり反応無くて、予想もしていなかった人が来てくれたりして。何この、なに、めっちゃ嬉しい!! なんだこれ!!! なんか、いろいろやってて良かった!!!

 

 人付き合いなんですよね。お客さん相手にもそうだし、興味持ってくださった方々にもそうですが、蔑ろにしちゃいけないなって。今回寄れなかった、知っているサークルさんのとこも、今度機会があったら絶対寄らなきゃって思ったんです。だって、そうやって知ろうとしたってことは興味があるってことなんだし、できればその人たちにもうれしがってもらいたいじゃないですか。

 ここまで書いておいてなんですが、もちろん来られなかった方々がたくさんいたこともわかっています。どうしても遠方で行けないんだって方もいらっしゃったでしょう。で、その人たちの中にも僕のこと知ってくださっている方がいたら、疎んじゃいけないなって思います。

 SNSやっているせいなんですけど、やっぱり画面越しの相手のこと軽んじているんですよね。これは率直に言うんですけど、普段人間相手に話しているのとは態度が違ってます。もっとずっと不貞不貞しくなっています。例を挙げて言えば、俺のツイート見ろーって感じて書いておいて相手のツイートは流し読みだったり、頭の中でカテゴライズしたり、勝手に避けたり妬んだり誹ったり、まあ、それくらいはしますよ。わざわざ書いていないけど。

 で、それをやっていて、ツイッターでは話す方、なんて言い張ったりもするわけです。ネット弁慶的な。リアルだと言わないけど心の中ちゃんと出来てますから、みたいなね。

 でもやっぱりそういう考え方は出来ているとは言わないな。相手がリアルな人だって認識した途端に萎縮するようじゃ、やっぱり嘘なんですよ。見栄なんです。その状態でツイートしている140字は見栄っ張りの140字で、確かに僕が書いている言葉だけど本来の言葉じゃない。いくらでも推敲できるし書き込むだけで完遂されるから勘違いしやすいけど、誰にも伝わらない言葉をいくら書き連ねても何も表現できないし自分は何も変わらない。

 だから、とりあえずはまあ、相手は人間なんだぜっていうのを常日頃から認識するところから、かなと。

 そしてその認識を続けていれば、もっといろんな人に言葉を伝えられるんじゃ無いかなと。文学フリマで本に手にとってもらえるようになるには、それからなんじゃないかなと、思うんです。

 そんなもんだから、添嶋譲さんにはたまたま僕のこと知ってもらえて、紹介もしてもらえたんですけど、やっぱり萎縮しちゃう。僕はまだそんなご紹介にあずかれるような人じゃない。文章力も作品の完成度も人柄としてもとてもとても。まあ、誰か来てくれる分には、嬉しいから、文学フリマ終わってから書くんだけどね(とはいえたぶん添嶋さんとこで見たから来ましたっていう人はいなかったと思う。少なくとも、言ってきた人はいなかった)。

 

 話がいろいろと逸れましたが、僕はこの度の文学フリマ東京でいろんなことを学びました。綾月ブログで書いたけど、今後はコンセプトを絞りたいかなと思っています。自分の作品を紹介できるように。それがお客様のためでもあり、僕自身の成長のためでもありますからね。

 次はおそらくテキレボ3。綾月メンバーとしての参加です。運営アンソロの方も提出する予定でいます。さらにtaskeyさんの方でも連載作品書きたいなと思ってプロットを認めております。趣味の方はこんな具合の三竦みですが、もちろん仕事もあります。どうするって、頑張るしかないんだなこれが。

 

 それではまた、ごきげんよう