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雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。創作サークル綾月所属。個人サークル鳴草庵代表。

『旅のラゴス』(筒井康隆)

 

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 

  どうやら旅とは、行って、帰ってくるまでを指すらしい。『旅のラゴス』を読んでそう気づいた。帰るまでが遠足とはよく言ったものだ。

 前評判を聞いていたときは、たくさんの目新しい街を回る周遊記かと思っていた。旅物語とはそういうものだと思い込んでいた。ところが、実際のところ闇雲に旅をするわけではない。ラゴスには明らかに目的があり、旅の道程も理にかなっている。一所に止まって十年近く過ごすこともしばしばあった。決していろんな場所をふらつき経験を蓄えることだけが目的なのではない。

 旅の経験と言えば、こんな話を聞いたことがある。ヨーロッパのどこかの古城の記録簿に、縁もゆかりも無さそうな日本人の名前が並んでおり、現地の人たちが不思議に思っているとの話だ。どこで聞いたのかはよく覚えていないが、あまり好意的な書き方はされていなかった。何かを身につけるわけでもない、旅の行程表を充実させるためだけの旅にどんな意味があるのか、暗に問題提起していたと記憶している。

 旅の目的は経験することだけではない。もっと言うならば、経験の量や種類などは本当はたいした意味が無いのだろう。

 

 ラゴスは二回旅をする。一回目の旅と二回目の旅は質が違う。その違いは読めばすぐわかるだろう。

 二回目の旅は戻らない旅だ。目的はあるが、それはとてつもなく困難で、おそらく生きて帰ってはこれない。それでも身体が動くのは、若い頃の思い出があるからであり、長いこと夢の中で見てきた光景のせいでもある。その全体を取り戻すことと解釈すれば、これもまた戻る旅と言えるのかもしれない。

 

 帯に口コミで話題とかかれているのだが、いったいどうして突然流行ったのだろう。それが少し気になる。