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雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。創作サークル綾月所属。個人サークル鳴草庵代表。

辻仁成『冷静と情熱のあいだ Blu』(角川文庫)

感想

 

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫) 冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)
(2001/09)
辻 仁成

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 タイトルはどこかで聞いたことがあった。印象的なので、たびたびどこかで引用されているのかもしれない。

 元々江國香織さんと同じタイトルで違う人物に焦点を当てた物語を書く企画で生まれたものらしい。読み終わってから知ったので、いずれ対となる作品も探したい。

 

 題材は恋愛で、主人公は過去の恋人のことを引きずっている男。

 過去をいつまでも見つめてしまうがゆえに現在に情熱を注げないでいる様が綿密に描かれている。

 

 内省的な描写が多いけれど、情景描写が綺麗で、そこはかとなく孤独さを織り込んであるものだから、じっくりと読んでみたくなる。

 辻仁成さんの文章は中学生の頃の教科書に載っていたので見たことはあったはずだけど、もう10年以上前のことだし、当時は読書家でもなかったのであまり覚えていない。ちょっと残念。

 

 冷静と情熱の対比がタイトルに出ているけれど、それが色濃く出てくるのは最後から二番目の章からだ。だから読んでいた印象としては、過去と未来の対立の方が強く残っている。普通の人は前に進んでいるけれど、主人公は過去に向かって生きていたい。その矛盾が、彼の中の情熱と冷静の相克を引き起こすことになる。

 

 タイトルの意味がわかるのは最後の最後だ。爽快というほど強くは無いけれど、ぴたりとはまるこの読後感は良いものだと思う。

 

 どうも江國香織さんの方は相方となる女性が主人公となっているみたいだ。この作品を正しく読み解くためにもやはり読むべきなのだろう。