雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

感想(小説)

【感想文】イリエの情景~被災地さんぽめぐり~ 3

第1巻を読んでから、イベントの度に続巻を購入し、積ん読しておいた。それをようやく読み終えたので、ここに報告する次第です。 シリーズを通して「被災地青春ロードムービー」と伺っており、第1巻はロードムービー、第2巻が被災地、そしてこの第3巻が青春に…

【感想】新世界より(貴志祐介)

例によって積ん読消化。 「お、『新世界より』買ってたんだ~、読も~」 と上巻を手に取ったのが昨日の朝だった。 出かけている途中で中巻、下巻を購入し、読み終えたときには今日の日が暮れていた。 買った経緯については憶えていない。 何か長めの小説を読…

【感想】GOTH(乙一)

積ん読の消化をした。『GOTH』だ。 読み終えたこの本は夏頃にBOOKOFFで買ったものだけど、本当は高校生の頃にも一度手に取っていた。そのときは読み切れなかった。まだ読書に慣れていない頃でもあったし、読み進める体力がなかったんだと思う。 度々書いてい…

【感想】盤上の敵(北村薫)

北村薫作品の中でもとりわけ異質な作品がある。 そんな噂を聞いたのはいくらか前のことだった。 日常の謎で、人間の悲しさや優しさを、読みやすく染みいるように語ってくれる。 僕が持っている北村作品のイメージはそのようなものだったので、異質というから…

【感想文】イリエの情景~被災地さんぽめぐり~ 1

社会人になってから、年に一度は県外、なるべく関東を離れるようにしている。いつもひとりでの旅だ。 一年目は名古屋に行き、二年目は金沢に行き、三年目は京都に行った。一年目、二年目は写真を撮って日記記事を公開するなどマメなことをしたものだが、三年…

【感想】貘の檻(道尾秀介)

大槇辰男は、離婚した妻の元に渡った息子と面会していた。その帰り、駅のホームで女性の自殺を目の当たりにする。彼女の名前は曾木美禰子。かつて、大槇の父が殺したと見做されていた女性だった。 大槇は曾木の死の真相を確かめるべく、水引きの伝説の残るか…

【感想】日曜日たち(吉田修一)

絡み合うということはどこかですれ違っているという意味でもある。 たとえ一緒にいたとしても、人と人とは違うもので、気づかないふりをしているけれど、少しずつ距離が生まれたり、不意に縮まったりする。 仲の良かったはずの友人が疎遠になったり、疎遠だ…

【感想】WILL(本多孝好)

両親を亡くし、高校卒業とともに葬儀屋を継いだ森野のもとへ舞い込んでくる幽霊話。自分の葬儀に変な噂が立たないように、森野は事情を調べ始める。 前作に『MOMENT』という小説があり、こちらについては随分と前に読んだ。記憶は曖昧なのだが、そのときの主…

【感想】ノエル―a story of stories―(道尾秀介)

人間は誰もが悪意を持ちうる。 道尾秀介さんの作品を読むと、いつもこの感覚がまとわりつく。 物語だとわかっているのに、不穏さに胸が締め付けられる。環境や精神の変遷をうけて、人間らしさをつかさどっているはずの理性がくるりと真っ黒に染め上げられる…

【感想】くちびるに歌を(中田永一)

長崎県の五島列島、とある中学校の合唱部。顧問の先生が産休に入り、新しい先生が東京から訪れる。 NHKコンクールまでの日々を、三年生の子どもたちを主体として送る物語。 中田永一名義の小説は『百瀬、こっちを向いて』以来となります。 もちろん本名義の…

【感想】月と蟹(道尾秀介)

道尾秀介で思い出すのは、『向日葵の咲かない夏』だ。大学時代に読み、泥の中に沈み込んでいくような不穏さが癖になり、真実が明らかになったときは息苦しさを覚えた。後に弟に貸し与えて、あまり好意見が返ってこなかったことにモヤモヤもしたのだが、今と…

【感想】一人っ子同盟(重松清)

自分が初めて重松清作品に触れたのがいつだったか、実のところ曖昧だ。 大学一年生の暇な時期だったか、高校卒業間際の空白期間か、あるいはそれよりもずっと前のことか。 とはいえ最初に購入した作品は覚えている。地元の古本屋の、漫画コーナーにおいやら…

【感想】路(吉田修一)

一九九七年、台湾の台北―高雄間高速鉄道建設工事の入札にて、自らの技術力を過信していた日本は、より低い予算を呈示した欧州連合を相手に敗北を喫した。しかしその後、台湾からのまるで恩赦のような申し出により、敗者復活の可能性を得る。三年後の二〇〇〇…

【感想】笹の舟で海をわたる(角田光代)

新居を探す二人の女性。年齢はどちらも六十代。若干入り組んだ関係性を仄めかせながら、不動産会社の勧めた物件についてありかなしかを話している。 家族小説なんだろうと、冒頭部を眺め、気が向いたら買おうと思ったのが今年の初めの頃だった。創作のために…

【感想】『先生とそのお布団』(石川博品)

以前、ライトノベル作家のアンソロジーの中で石川博品さんの作品をお見かけしたことがあり、ここでも記事を書いたことがある。 その流れで数年ぶりに書店のラノベコーナーに足を運び、この作品を見つけるに至った。以前読んだ作品と同じように、こちらもカク…

【感想】7月のちいさなさよなら(石川博品)

昨年の末、『僕とキミの15センチ』(ファミ通文庫)という本を読んだ。これは15センチをテーマにしたアンソロジーで、参加者は基本的にライトノベルを発表している方々だった。 ライトノベルを読みたいと思いつつ、長く続くシリーズを読む気力がなかなか湧…

【感想】風に舞い上がるビニールシート(森絵都)

2017年の末に、その年に文芸雑誌に掲載された短編を寄せ集めたアンソロジーを読んだ。 テーマが特にあるわけでもなかったのに、そのうちの半数がミステリ風味なのが何だか気にくわなかったのだが、そんな中で一人、ミステリではない作品を書いていたのが森絵…

【感想】すべて真夜中の恋人たち(川上未映子)

これは大人の恋愛小説と、割り切ってしまうと、バイアスが掛かってしまうように想われる。 この物語の主人公は三〇代の後半に差し掛かる女性で、相手は五〇代と思われる初老の男性。客観的には大人同士。そういったものに興味があるかと言われると、どちらか…

【感想】映画篇(金城一紀)

大学四年の時間を持て余していた時期に、映画好きの後輩から『GO』という邦画を勧められた。 在日朝鮮人の主人公が社会と反発しつつ自分を見つめ直し突き進む映画で、触れがたいシリアスなテーマにも関わらず、視聴後の気分は爽快だった。 『GO』の原作者と…

【感想】音楽の海岸(村上龍)

村上龍といえば、僕はときどき作品を手に取るのだけど、いつも途中で読むのを止めてしまったり、読み終えてもうまく言葉がまとめられずに放置してしまう。 とはいえいつまでも何も書けないのもつまらないので、せっかく読み切ったことだし何かしら残してみる…

それはただの美しさだった――『ヘヴン』(川上未映子/講談社)

川上未映子さんの『ヘヴン』を読了しました。

2016年の読書遍歴を総括する(後半)&今年のお薦め10冊

それでは後半行ってみましょう。

2016年の読書遍歴を総括する(前半)

毎年この時期になると総括記事を書きたくなるものです。 いつもは読んだ本をまとめて羅列して、いくつかお薦めの本をピックアップする、という形式でしたが、だんだんしんどくなってきました。 そもそも羅列することにどんな意味があるのか考えて、それより…

【文フリ感想文】多様な文藝に触れながら――『棕櫚 第5号』(マルカフェ文藝部)

何度か足を運んでおります、マルカフェ文藝部。 マルカフェっていうのは、東急池上線御嶽山駅からほど近いところにある「大人のための週末カフェ」。時間に余裕があればまた行きたい、なんて思いつつ結局僕はまだ一度しか行ったことがない。それなのにどうや…

【文フリ感想文】清楚さの裏側に見られ、見つめられる――『スロウレイン』(青樹凜音/月と缶チューハイ)

最初に読み終わった作品の方がTwitterをしていないみたいでしたので、いつものようにTwitterに垂れ流すばかりでなくブログにでも書き置きしておこうと思い立ってみました。 「月と缶チューハイ」というサークルで頒布されていた、青樹凜音さんの『スロウレイ…

【感想文】怖さと可笑しさのうらおもて――『夜行』(森見登美彦)

「どうして夜行なんだろう」 私が呟くと、画廊主は微笑んで首を傾げた。 「夜行列車の夜行か、あるいは百鬼夜行の夜行かもしれません」 十年前の鞍馬の火祭、英会話スクールの仲間の一人が失踪した。何一つ手がかりは残されておらず、虚空に吸い込まれたかの…

【感想文】正しいからこそ怖ろしい――『空白の叫び(上)』(貫井徳郎)

久しぶりの貫井徳郎は、奇抜な構成を排した重厚なクライムノベルでした。 まだ上巻しか借りていない状態で感想を書くのは、結論がわからないために不安もあるが、それでも今のところ感じたことを書き置きしておこうと思います。 時代は二〇〇〇年の少年法改…

【感想文】多数派に飲み込まれないように――『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(梨木香歩)

ノボちゃんは、僕の年頃ってのは、いろんなことを考える力を持ち始め、かつ先入観や偏見少なく(なしに、とは言わなかったな、うん)「考える」ことに取り組み始める貴重な時期で、人生に二度と巡ってきやしない。そういう時期に考えたこと、感じたことをき…

働かない人たちを掻き集め、世界の終わりに備えよう――『我もまたアルカディアにあり』感想文

アルカディアマンション。 どんなに胡散臭かろうと、ここには唯一無二の特権がある。 働かなくても生きていけるという特権が。 (『我もまたアルカディアにあり』 1 より) だいたいタイトルどおりの話である。

有頂天家族(森見登美彦)

有頂天家族 (幻冬舎文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2010/08/05 メディア: 文庫 購入: 14人 クリック: 516回 この商品を含むブログ (132件) を見る 忘れないうちに書いておく。