雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。創作サークル綾月所属。個人サークル鳴草庵代表。

感想

それでも町は廻っている 感想文

ネタバレありの私的な感想文です。 死というのは物語を作る上で一度は扱ってみたいテーマでした。 生まれてから積み重ねて来た成長や思い出が、何かの拍子で死を介したが最後、突然全てが無に、というのではあんまりです。 「死後」「あの世」という概念が世…

それはただの美しさだった――『ヘヴン』(川上未映子/講談社)

川上未映子さんの『ヘヴン』を読了しました。

【文フリ感想文】多様な文藝に触れながら――『棕櫚 第5号』(マルカフェ文藝部)

何度か足を運んでおります、マルカフェ文藝部。 マルカフェっていうのは、東急池上線御嶽山駅からほど近いところにある「大人のための週末カフェ」。時間に余裕があればまた行きたい、なんて思いつつ結局僕はまだ一度しか行ったことがない。それなのにどうや…

【感想文】命を賭して戦うということ――『聖の青春』(映画)

なんとなくまだ胸の内がざわついていた。不調というか、不安定というか、このまま仕事の日を迎えるのも憂鬱。気を落ち着けようと東京へ向かった。 目的は往路で考えた。 電車に揺られながら映画を調べて、『この世界の片隅に』と『聖の青春』で迷って、結局…

【文フリ感想文】清楚さの裏側に見られ、見つめられる――『スロウレイン』(青樹凜音/月と缶チューハイ)

最初に読み終わった作品の方がTwitterをしていないみたいでしたので、いつものようにTwitterに垂れ流すばかりでなくブログにでも書き置きしておこうと思い立ってみました。 「月と缶チューハイ」というサークルで頒布されていた、青樹凜音さんの『スロウレイ…

【感想文】怖さと可笑しさのうらおもて――『夜行』(森見登美彦)

「どうして夜行なんだろう」 私が呟くと、画廊主は微笑んで首を傾げた。 「夜行列車の夜行か、あるいは百鬼夜行の夜行かもしれません」 十年前の鞍馬の火祭、英会話スクールの仲間の一人が失踪した。何一つ手がかりは残されておらず、虚空に吸い込まれたかの…

【感想文】正しいからこそ怖ろしい――『空白の叫び(上)』(貫井徳郎)

久しぶりの貫井徳郎は、奇抜な構成を排した重厚なクライムノベルでした。 まだ上巻しか借りていない状態で感想を書くのは、結論がわからないために不安もあるが、それでも今のところ感じたことを書き置きしておこうと思います。 時代は二〇〇〇年の少年法改…

【感想文】多数派に飲み込まれないように――『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(梨木香歩)

ノボちゃんは、僕の年頃ってのは、いろんなことを考える力を持ち始め、かつ先入観や偏見少なく(なしに、とは言わなかったな、うん)「考える」ことに取り組み始める貴重な時期で、人生に二度と巡ってきやしない。そういう時期に考えたこと、感じたことをき…

働かない人たちを掻き集め、世界の終わりに備えよう――『我もまたアルカディアにあり』感想文

アルカディアマンション。 どんなに胡散臭かろうと、ここには唯一無二の特権がある。 働かなくても生きていけるという特権が。 (『我もまたアルカディアにあり』 1 より) だいたいタイトルどおりの話である。

有頂天家族(森見登美彦)

有頂天家族 (幻冬舎文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2010/08/05 メディア: 文庫 購入: 14人 クリック: 516回 この商品を含むブログ (132件) を見る 忘れないうちに書いておく。

君の名は。(新海誠)※若干のネタバレあり

最初に言っておくとべた褒めします。気になる方はご注意ください。

風の海 迷宮の岸 (小野不由美)

風の海 迷宮の岸〈上〉 十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート) 作者: 小野不由美,山田章博 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1993/03/20 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 16回 この商品を含むブログ (69件) を見る 風の海 迷宮の岸(下) 十二国記 (講談…

ブラックライダー(東山彰良)

ブラックライダー(上) (新潮文庫) 作者: 東山彰良 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る ブラックライダー(下) (新潮文庫) 作者: 東山彰良 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/28 メディア: …

『紫電改のマキ(1)』(野上武士)

紫電改のマキ(1) (チャンピオンREDコミックス) 作者: 野上武志 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 2014/03/20 メディア: コミック この商品を含むブログ (11件) を見る なんかあと一冊買おうと思って手に取りました。想像していたのは、普通にミリタリーも…

『ハクメイとミコチ(1)』(樫木祐人)[ネタバレあり]

ハクメイとミコチ 1巻 (ビームコミックス) 作者: 樫木祐人 出版社/メーカー: エンターブレイン 発売日: 2013/01/15 メディア: コミック 購入: 5人 クリック: 79回 この商品を含むブログ (30件) を見る 作者さんの名前は祐人と書いて「たくと」と読むんですね…

『BLUE GIANT(7)』(石塚真一)[ネタバレあり]

BLUE GIANT(7) (ビッグコミックス) 作者: 石塚真一 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/12/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 年末に、「あー新刊出てるなあ」とは思っていたんですが、ぼーっとしているうちに次の巻まで発売さ…

『百万畳ラビリンス(上・下)』(たかみち)

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス) 作者: たかみち 出版社/メーカー: 少年画報社 発売日: 2015/11/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス) 作者: たかみち 出版社/メーカー: …

『ハクメイとミコチ(4)』(樫木祐人)

ハクメイとミコチ 4巻 (ビームコミックス) 作者: 樫木祐人 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン 発売日: 2016/01/15 メディア: コミック この商品を含むブログ (6件) を見る 年明け早々に表紙絵に惹かれて、買いたいなあと思いつつ引き延ばして結局…

ミート・ザ・ビート(羽田圭介)

ミート・ザ・ビート 作者: 羽田圭介 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2010/02/06 メディア: 単行本 クリック: 11回 この商品を含むブログ (5件) を見る 勉強の傍ら警備員のアルバイトに勤しんでいる浪人生の彼が、ある日古いビートが譲り受けられることに…

『愚行録』(貫井徳郎)

愚行録 (創元推理文庫) 作者: 貫井徳郎 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2009/04/05 メディア: 文庫 クリック: 20回 この商品を含むブログ (46件) を見る どこから見ても評判の良い奥さんに順調な出世を歩む旦那さん、そして二人の子ども。絵に描いたよ…

『サクリファイス』(近藤史恵)

サクリファイス (新潮文庫) 作者: 近藤史恵 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/01/28 メディア: 文庫 購入: 10人 クリック: 82回 この商品を含むブログ (135件) を見る 自分を犠牲にしてでもチームを勝利へ導くこと。そのような独特の性質に興味を抱いて…

まほろ駅前番外地

まほろ駅前番外地 著者 : 三浦しをん 文藝春秋 発売日 : 2009-10 ブクログでレビューを見る» 『まほろ駅前多田便利軒』を読んだのがもう一年半くらい前だったと思います。主人公二人がそれぞれ過去に縛られながら、互いの距離感をはかりつつ、種々雑多な事件…

『紫苑物語』(石川淳)

紫苑物語 (講談社文芸文庫) 著者 : 石川淳 講談社 発売日 : 1989-05-05 ブクログでレビューを見る» 先日『紫苑物語』の終わりの一節を読んで、あまりの美しさに衝撃を受けてすぐに本を買い求めました。表題作に加えて、『八幡縁起』及び『修羅』の収録となっ…

『小僧の神様・城の崎にて』

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫) 著者 : 志賀直哉 新潮社 発売日 : 2005-04 ブクログでレビューを見る» 年末に借りてあったのを昨日読み終わりました。志賀直哉。うちのどこかに全集のうちの一巻があった気がする。 『城の崎にて』は高校の教科書に載って…

『悪文』

悪文―裏返し文章読本 (ちくま学芸文庫) 作者: 中村明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2007/01 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 12回 この商品を含むブログ (15件) を見る よくよくお世話になっている中村明さんの著作であり、前回紹介した『名文』の…

『名文』

名文 (ちくま学芸文庫) 著者 : 中村明 筑摩書房 発売日 : 1993-03 ブクログでレビューを見る» 中村明の『名文』と『悪文』とセットで買いました。元々探していたのは『悪文』の方だったのですが、興味が先に立って『名文』の方を先に読むことになりました。 …

今年読んだ本まとめ

2015年もいよいよ終わり、ということで今年どんな本を読んだのかをまとめてみました。長くなるので目次をご活用ください。 小説 漫画 そのほか お薦め本ベスト12 小説 商業誌の小説のうち、年内に読み切った本です。紙書籍、電子書籍、購入した本、借りた本…

鉄血のオルフェンズ 鉄血編(4話~6話) 感想文

CGS編に引き続き鉄血のオルフェンズの感想文。 その前に簡単な振り返りをしますと、こう。 1話 クーデリアの護衛を任されたCGS三番隊がギャラルホルン火星支部の中隊を相手取る。 2話 バルバトスが初戦闘を終え、ギャラルホルン側が撤退。逃げ出した一軍が…

鉄血のオルフェンズ CGS編(1話~3話) 感想文

CGS編をまとめて見ての感想文を書いておきます。 オルガについて CGS編でのオルガが鉄華団結成に至るまで気持ちを固めて行く様を追っていきます。 まずは何を押すにもまず三日月との関係がありますね。 第一話の冒頭は、オルガの見ている夢で始まる。幼い頃…

『スキップ』(北村薫)

北村薫の『スキップ』を読み終えて、緩やかで良い余韻に浸り、時間もあるものだからブログでも書いてみるかと思い至った次第である。 まさか前回の記事が八月だったとは思いも寄らなかった。 スキップ 作者: 北村薫 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1995/08…

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展

国立新美術館で開かれている「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展に先日ふらっと足を運んだところ、予想以上に楽しめた。展覧会は8月31日まで開かれているので、まだぎりぎり8月である今のうちに紹介しておこうと思う。 「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲー…

夏をゆく人々

先日神保町を歩いているときに不意に映画が見たくなり、岩波ホールに潜り込んだ。普段映画を見るのはだいたい家のパソコンか、イオンシネマみたいな家族連れのわんさかいる大型の劇場かでしかなかったから、ビルの最上階を締め切り厳かな雰囲気の中で鑑賞す…

『流』(東山彰良)

流 著者 : 東山彰良 講談社 発売日 : 2015-05-13 ブクログでレビューを見る» 「わしらに大義なんぞありゃせんかった」 主人公の祖父が述懐するのは、国民党と共産党に分けられるときのことだ。ちょっとした好悪で敵と味方にわかれ、その結果大陸と島国がとて…

悟浄出立

悟浄出立 著者 : 万城目学 新潮社 発売日 : 2014-07-22 ブクログでレビューを見る» 2009年から2014年という長い期間で書かれている。2006年にデビューした作者の、物語の書き方がどんなふうに変わったのかが見えてくるようだった。・悟浄出立 『西遊記』の沙…

『SHIROBAKO』 感想文

「SHIROBAKOを最後に会社を畳もうと思っていた」――永谷P再起の理由ascii.jp 先週上記の記事を読んだ。記事の中では古い時代の経験が過去に受け継がれていく様に触れられており、もともとそのようなテーマが好きだったので、ひとまず一話目から見てみようかと…

『センスをみがく文章上達事典―魅力ある文章を書く59のヒント』(中村明)

センスをみがく文章上達事典―魅力ある文章を書く59のヒント 作者: 中村明 出版社/メーカー: 東京堂出版 発売日: 2005/09 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (2件) を見る 出張ついでに立ち寄った浦和の紀伊国屋書店に文章術コ…

きれいな文章についての本を衝動買いした。

日経ホームマガジン 美しい日本語と正しい敬語が身に付く本 新装版 作者: 日経おとなのOFF 出版社/メーカー: 日経BP社 発売日: 2015/04/16 メディア: ムック この商品を含むブログ (1件) を見る 文章の練習になるかなと思って購入した。和語の話ももちろんあ…

ヴォイニッチホテルについて【ネタバレあり】

・はじめに ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス) 作者: 道満晴明 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 2010/11/19 メディア: コミック 購入: 28人 クリック: 326回 この商品を含むブログ (77件) を見る ヴォイニッチホテル 2 (ヤングチャ…

BLUE GIANT(5)

BLUE GIANTの五巻を購入しました。漫画の感想は初めてですが自分なりにやってみようかと思います。

『悪女はこうして生まれた』

『美貌の持ち主であること』『男を魅了すること』『行動力と知性を伴うこと』そして『最終的に社会規範に反したこと』といった要件を基に、時代の『悪女』を突き詰めていく実験的な評論。そもそも残虐性を帯びたとんでもない人もいれば、本当に美しいだけで…

『鉄道員』

高倉健が亡くなったのは去年、2014年の末だった。

『面白いほどよくわかる!犯罪心理学』

辻仁成『冷静と情熱のあいだ Blu』(角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)(2001/09)辻 仁成商品詳細を見る タイトルはどこかで聞いたことがあった。印象的なので、たびたびどこかで引用されているのかもしれない。 元々江國香織さんと同じタイトルで違う人物に焦点を当てた物語を書く企画で生まれ…

『冷たい校舎の時は止まる』(辻村深月)

0. 「この本はきっと自分に合っている」と気づいたのは、読み始めてからまだ10分も経っていないときだった。駐車場に停めた車の中で時間待ちをしていて、手元に持ってきていたこの本を読んだのである。 読めたのは最初の30ページほどまでだ。冒頭にき…

貴志祐介『硝子のハンマー』(角川文庫)

とても本格的なミステリーだ。これほど真っ向から密室殺人を解きにかかった本は久しぶりに読んだ気がする。 本格派ミステリーというのはシャーロックホームズの時代から続く、謎を解くことを主題とした物語のことだ。誰が、どうして、どうやっての三つを主に…

浅田次郎『蒼穹の昴〈下巻〉』(講談社) 備忘録

清国末期を舞台としたスペクタクルロマン。前回と同じように、付箋をはった個所を取り上げていく。 p87 「全部のことね。ずうっと、ずうっと」 王逸は頷いて、まさしく宇宙の一点に立ち上がった少女の身体を見上げた。小梅はまる一晩、「宇宙」の文字を書き…

スイートフィッシュとジグソーパズル(色彩writer)

第18回文学フリマで購入した、サークル名・色彩writer様の短編集、『スイートフィッシュとジグソーパズル』を読み終えました。 明日、11月24日に開催される第19回文学フリマでも頒布されます。 もう半年も前のことなので、手に取った理由ははっきり…

浅田次郎『蒼空の昴〈上巻〉』(講談社) 備忘録

毎朝10ページずつというローペースで読み進めていた『蒼穹の昴〈上巻〉』がようやく読み終わりました。読みながら、気になった言葉に付箋を貼っていましたので、それをここに書置きしておこうと思います。 p39 抗う気力はどこにも残ってはいなかった。春児…

岩城けい『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)

※この感想文にはネタバレが含まれます。お気を付けください。 この本を読み始めると、独特の違和感に襲われる。国にまつわる情報が少ないからだ。主人公のサリマが別の国から来た難民であることはわかるが、今いる場所がどこにいるかもわからない。主人公の…

杉山茂樹『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』(光文社新書)

この新書は、サッカーにおける布陣の重要性を、主に90年代~00年代の代表的な実例に基づいて解説している。 日本では、「サッカーは布陣でするものではない」との論調が主流だったのが、近ごろでは変わりつつある。代表のサッカーなどを通して数多くの解説、…