雲に鳴く。

趣味の小説書き、雲鳴遊乃実のブログです。個人サークル『鳴草庵』

【感想】貘の檻(道尾秀介)

大槇辰男は、離婚した妻の元に渡った息子と面会していた。その帰り、駅のホームで女性の自殺を目の当たりにする。彼女の名前は曾木美禰子。かつて、大槇の父が殺したと見做されていた女性だった。

大槇は曾木の死の真相を確かめるべく、水引きの伝説の残るかつての故郷へと赴く。

 

夢を食べる動物、貘の名がタイトルに冠されている理由は、大槇が見る夢にある。彼には根深い自殺願望があり、プロプラノロールという薬剤を服用することでその苦しみを忘れることができるが、副作用として悪夢を見る。

各章の末尾に挿入される悪夢の描写は、まるで幻想小説のようでもあり、現実を掠めるところ、変遷をたどるところを含めて、まさしく後を引く悪夢といった感じてとても面白かった。どこへいくともわからないその夢こそが、この小説を結論ありきで語られる他のミステリーとは一線を画すものにしていたと思う。

 

デビュー作の『背の眼』は怪奇ミステリーでもあり、冒険小説的な要素もあったのだけど、『貘の檻』では同じ要素をより洗練とさせた印象を受けた。

冒頭の暗い内面描写から始まり、とある事件からミステリ色が一気に深まる。暗さを保ったまま、ともすればコミカルでもある冒険的な描写を織り交ぜるのは難しいことだし、この作品では上手く働いていたと思う。

 

新潮文庫の100冊を頑張ろうと思って手に取った一冊。とても面白かったです。

第7回Text-Revolutions(テキレボ)に参加いたします

こんにちは、雲鳴遊乃実です。

標記の通り、第7回テキレボに参加いたしますので、その告知です。

以下、詳細。

 

第7回Text-Revolutions詳細 

日程:2018/07/16(月・祝) 11:00~16:00

ブース:G-18

場所:都立産業貿易センター 台東館4F全面 【アクセス

カタログ【https://plag.me/c/textrevo07/4F/G/18

配置図【http://text-revolutions.com/event/7thmap

公式アンソロ参加【九〇パーセントの水 | Text-Revolutions 

※テキレボでは参加者の作風等を知らせる共有媒体としてテーマアンソロジーが作られます。第7回のテーマは「海」、リンク先はテキレボHPです。会場での物理書籍頒布もあり。

 

テキレボの特徴として、毎回多数の有志企画が開催されることが挙げられます。

私が参加するのは以下の2つの企画です。

1)宇宙遊泳MAP(主催:夕凪悠弥/オービタルガーデン)

 

  企画URL→【http://yunag.blog.fc2.com/blog-entry-123.html

  参加作品は「台車は虚空の死体を運ぶ」です。

2)ゆるっとSF(主催:藍間真珠/藍色のモノローグ)

 

  企画URL→【http://indigo.mints.ne.jp/yurusf/

  参加作品は「From AI to U」です。

 

参加作品

1)From AI to U

  既刊/長編/SF 1,000円

  カタログ→【https://plag.me/p/textrevo07/5460

  試し読みはこちら→From AI to U(雲鳴遊乃実) - カクヨム(テキレボ前完結予定)

2)綾は千々、されど同じ学舎の中で

  既刊/短編集/学園 500円

  カタログ→【https://plag.me/p/textrevo07/5461

  試し読みはこちら→冬の自販機|無料小説ならエブリスタ(掲載作のひとつです)

3)台車は虚空の死体を運ぶ

  新刊/短編/SF 200円

  カタログ→【https://plag.me/p/textrevo07/5462

  試し読みはこちら→生首を読んでみろ 台車は虚空の死体を運ぶ(元ブーン系小説)

 

「From AI to U」は2年前の刊行作品であり、書籍版は雨森柚季さんが表紙を手がけています。元はTaskeyの連載作品でしたが、場所をカクヨムに移し、全文を掲載する予定です。

「綾は千々、されど同じ学舎の中で」は創作サークル綾月での発表作品です。書籍版は昨年の11月に発行いたしました。表紙にはしまや出版さんのデザインセミオーダーを利用しています。

「台車は虚空の死体を運ぶ」は2年前のブーン系小説企画での発表作品です。書籍版は初めての自家製本です。表紙にはPixivのフリー素材とイラストやを使用しています。

 

その他

テキレボに参加するのは第4回以来です。2年前ですね。

当時はまだイベント参加初心者ということもあり、参加料低めでご勘弁いただいた記憶があります。(そういう優待制度があったのです)

その後どうして参加していなかったのか、わかりません。記憶はどうにも曖昧です。当時一緒に参加していた綾月メンバーが霧散したから? 自分のアンソロが掲載された書籍を手に入れなかったことが悔しかったから? いや、そんな大層なことじゃないです。多分忙しかったからです。

さて、Google検索でテキレボと打ち込めば未だに「内輪」が候補表示されるテキレボ(突然の喧嘩売り)ですが、文章系イベントとしての存在感はどんどんでかくなっている気がします。そんな中、ちょくちょく足を運んでいるだけの非内輪気味の僕でも楽しめるのかどうか、ちょっと実証してきます。

 とはいえ、きっと大丈夫です。上記の拙作や、テキレボというイベントそのものに興味を抱かれた方はぜひとも足を運んでください。小説を楽しんでいる人ならば損はないと思います。